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シネマ1987online

父よ

「父よ」パンフレット

ジョゼ・ジョヴァンニが自分の父親を描いた自伝的作品。22歳で死刑判決を受けた息子(ヴァンサン・ルクール)を父親(ブリュノ・クレメール)が助けようと奔走する。息子がいる刑務所の前にあるカフェに通い詰め、看守から息子の様子を聞き、弁護士を頼み、被害者の家を訪ねて特赦の嘆願書を書いてもらう。父親は息子から嫌われていると思っているので、自分の行動を隠している。息子は犯罪には加わったが、殺人は犯していなかった。若者の犯罪抑止のために見せしめの意味を込めて通常より重い刑がくだされたことを映画は示唆する。父親の必死の努力で息子は終身刑に減刑され、11年後に釈放される。その後ジョヴァンニは罪を取り消されて完全な復権を果たすが、その時父親は既に亡くなっていたそうだ。ジョヴァンニと父親はついに言葉ではお互いの愛情を表現しなかった。それをジョヴァンニは悔いて、この映画を作ったと最後にジョヴァンニ自身によるナレーションが流れる。だからこれは偉大なプライベートフィルムとも言える。それにもかかわらず、この映画が普遍性を持つのは父親と息子の関係が多かれ少なかれこの映画で描かれたようなものであるからだろう。静かな描写の中にジョヴァンニの父親への愛情と感謝の気持ちがあふれている。父親を演じるブリュノ・クレメールも味わい深い演技を見せてうまい。

ジョゼ・ジョヴァンニが自分の父親を描いた自伝的作品。22歳で死刑判決を受けた息子(ヴァンサン・ルクール)を父親(ブリュノ・クレメール)が助けようと奔走する。息子がいる刑務所の前にあるカフェに通い詰め、看守から息子の様子を聞き、弁護士を頼み、被害者の家を訪ねて特赦の嘆願書を書いてもらう。父親は息子から嫌われていると思っているので、自分の行動を隠している。息子は犯罪には加わったが、殺人は犯していなかった。若者の犯罪抑止のために見せしめの意味を込めて通常より重い刑がくだされたことを映画は示唆する。父親の必死の努力で息子は終身刑に減刑され、11年後に釈放される。その後ジョヴァンニは罪を取り消されて完全な復権を果たすが、その時父親は既に亡くなっていたそうだ。ジョヴァンニと父親はついに言葉ではお互いの愛情を表現しなかった。それをジョヴァンニは悔いて、この映画を作ったと最後にジョヴァンニ自身によるナレーションが流れる。だからこれは偉大なプライベートフィルムとも言える。それにもかかわらず、この映画が普遍性を持つのは父親と息子の関係が多かれ少なかれこの映画で描かれたようなものであるからだろう。静かな描写の中にジョヴァンニの父親への愛情と感謝の気持ちがあふれている。父親を演じるブリュノ・クレメールも味わい深い演技を見せてうまい。

元々の原作はジョヴァンニが1990年に書いた「彼は心に誰も知らない秘密の花園を持っていた」で、友人であるベルトラン・タヴェルニエが映画化を薦め、共同脚色している。ジョヴァンニは今年79歳。父親の行動を知ったのは刑務所での体験を元に書いた「穴」を出版した33歳の時というから、映画化するのに40年以上の年月がかかったことになる。そのためか単純な泣かせる映画にはなっていない(もちろん、ジョヴァンニが泣かせる映画など目指すはずがない)。父親の愛情を深く描いてはいるが、息子を助けようとする父親を(例えば「父の祈りを」のように)重点的にドラマティックに描くのではなく、父親の人間性を含めて描いてある。父親の努力だけではなく、父親そのものを描いた映画なのである(原題は「私の父」)。父親の賭博師としての生活など本筋とはあまり関係ないと思える部分もあるが、ジョヴァンニにとってそれはなくてはならない部分なのだろう。

必死の思いで死刑から救ったのに、父親は出所するジョヴァンニを迎えにいかない。「穴」の映画化に合わせたサイン会でもジョヴァンニにの前に姿を見せず、「これでいい。いいんだ」とつぶやきながら立ち去る。本心を隠し続けたこの父親像はある意味、ハードボイルドだ。ジョヴァンニはノワールを書く作家だが、冒険小説ファンにも支持が高いのはこういう部分があるからだろう。

ジョヴァンニの映画を劇場で見るのは個人的には「掘った奪った逃げた」(1979年)以来だからなんと23年ぶりである(フィルモグラフィーを見ると、ビデオや映画祭での公開を除くと、日本の劇場での一般公開も23年ぶりだった)。ジョヴァンニにとっても劇場用映画としては13年ぶりの作品となる。ノワールの雰囲気が漂い、久しぶりにフランス映画らしいフランス映画を見たという感じ。演出的にはやや緩む部分があるのだが、ジョヴァンニにはまだまだ映画を撮ってほしいと思う。

【データ】2001年 フランス 1時間55分 配給:セテラ・インターナショナル
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ 製作:アラン・サルド 原作:ジョゼ・ジョヴァンニ「父よ」(白亜書房) 脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ ベルトラン・タヴェルニエ 撮影:アラン・ショカール 美術:ロラン・ドヴィル 衣装:ジャクリーヌ・ブシャール 音楽:シュルジェンティ
出演:ブリュノ・クレメール ヴァンサン・ルクール リュフュス ミシェル・ゴデ ニコラ・アブラハム マリア・ピタレジ エリック・ドゥフォス セドリック・シェヴァルメ シャルロット・カディ ガブリエル・ブリヤン フランソワ・ペロー ミシェル・コルド

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