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トゥームレイダー

「トゥームレイダー」

ヒットゲームの映画化で、アメリカでは「女性主演映画のオープニング興行収益ベスト」というスマッシュヒットになった冒険アクション。サイモン・ウエスト(「コン・エアー」「将軍の娘 エリザベス・キャンベル」)の演出自体は緊密さを欠くが、アンジェリーナ・ジョリーが適役といえる活躍を見せ、退屈しない出来になっている。厳しいトレーニングを積んで撮影に臨んだというジョリーの体型と二丁拳銃を鮮やかに操るアクション場面は合格点で、水準的なSFXと併せてビジュアル面での満足度はまずまずである。強大な力を得る秘宝を手に入れようとする秘密結社との対決−という使い古された設定の脚本は明らかに「インディ・ジョーンズ」シリーズを意識した作り。その割に話の発展性とスケール感を欠くのが惜しまれるが、ヒロインが幼いころに死別した父親(ジョン・ボイト)との絆を織り込んだのはポイントで、実際の親子であるボイトとジョリーの関係も手伝って、アクションだけの無味乾燥さから逃れることができたようだ。

ヒロインのララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)は英国貴族ビリー・クロフト(ジョン・ボイト)の娘で広大な屋敷に住んでいる。仕事はトレジャー・ハンター、古代の遺跡から秘宝を捜すトゥームレイダー=墓荒らしでもある。ある日、ララは自宅の隠し部屋から20年前に失踪した父が残した時計を見つける。この時計、時間を操作する古代の秘宝トライアングルへの手がかりらしい。トライアングルは滅びた古代都市によって2つに割られ、封印された。5000年に一度の惑星直列時にトライアングルは本当の力を発揮する。秘密結社イルミナーティはトライアングルを捜しており、父の失踪もこれと関係があるらしい。イルミナーティはララの屋敷に押し入り、時計を奪取。父の形見を取り戻し、世界破滅の危機を救うため、ララはトライアングルの片割れがあるカンボジアのアンコールワットに飛ぶ。

映画の冒頭、大型戦闘訓練ロボットとララが戦う場面から、アンジェリーナ・ジョリーのアクションは鮮やかだが、考えてみると、なぜトレジャー・ハンターがここまでして戦闘に強くならなければならないのか、よく分からない。古代の遺跡に侵入者を阻む仕掛けがあるというのは「インディ・ジョーンズ」シリーズの影響だろうし、悪党との秘宝争奪戦のもよくある設定だが、このために体を鍛えているのなら、あまり説得力はない。カンボジアからシベリアへ舞台を移す展開もやや単調で、B級のイメージが抜けきれないのはこういう細部がないがしろにされているからだろう。サイモン・ウエストの演出はビジュアル面での構成は水準的。ただし、それだけなので深みに欠ける映画になってしまう。もう少しヒロインの心情を描き込むと良かっただろう。

広大な屋敷と忠実な執事、天才プログラマーを従える設定は「バットマン」のようで、シリーズ化にはもってこい。事実2作目が計画されている。A級を目指すなら2作目は別の監督に演出させた方がいいと思う。

【データ】2001年 アメリカ 1時間41分 配給:東宝東和
監督:サイモン・ウエスト 製作総指揮:ジェレミー・ヒース=スミス スチュアート・ベイアード 製作:ローレンス・ゴードン ロイド・レヴィン コリン・ウィルソン 脚本:パトリック・マセット ジョン・ジンマン 原案:サラ・B・クーパー マイク・ウエッブ マイケル・コレリー 撮影:ピーター・メンジス プロダクション・デザイン:グレン・スキャントルベリー 美術:ジム・モラハンン デヴィッド・リー デイブ・オールデイ ス・ウィテイク 特殊効果:クリス・コールボールド 視覚効果:スティーブン・ベッグ
出演:アンジェリーナ・ジョリー ジョン・ボイト イアン・グレン ノア・テイラー ダニエル・クレイグ リチャード・ジョンソン クリス・バリー ジュリアン・リンドツット レスリー・フィリップス ロバート・フィリップス レイチェル・アップルトン

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