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シネマ1987online

二重スパイ

「二重スパイ」パンフレット

1980年代の韓国を舞台に北朝鮮の二重スパイを描く。このタイトルはネタを割っていてあまり良くないが、映画はハン・ソッキュ(「シュリ」)の熱演と緊密な展開でまず面白く仕上がっている。ただ、監督デビューのキム・ヒョンジョン(今年30歳)の演出は欧米のスパイ映画に影響されたようで、ラストのブラジルの場面などは、やっぱりそうなるかという感じである。観客に先が読めるこの場面、不要だったのではないか。ハン・ソッキュの必死な形相の演技は空回りはしていないし、コ・ソヨンの清楚さも良く、1980年代の韓国の緊迫した雰囲気を十分に伝える映画にはなっているけれど、物語はどうも細部に詰めの甘さが残る感じが拭いきれなかった。

1980年のベルリンで1人の男が西側に亡命する。この男、イム・ビョンホ(ハン・ソッキュ)は実は北朝鮮のスパイだった。韓国の国家安全企画部の拷問に耐えたイムは安企部の団長ペク・チョンヨル(チョン・ホジン)に身柄を預けられ、武装スパイの軍事訓練教官となる。2年後、安企部の正式要員となったイムに北から指令が下る。「DJに接触せよ」。そのDJ、ユン・スミ(コ・ソヨン)もまた北朝鮮のスパイだった。ペク団長の妻が2人を引き合わせたことから2人は恋人を装いつつ、情報交換していたが、本当に好意を抱き始めるようになる。

スミは愛したビョンホを失いたくないために北の指令を伝えない(これが少し唐突に感じる)。このためビョンホは北からも南からも狙われることになる。「一緒に逃げて。北でも南でもないところへ」というスミに対して、ビョンホは「反動的なことを言うな。俺たちは上から死ねと言われたら死ぬんだ」と答える。これが真意ならば、ラストにつながっていかないのである。そんなことを言いつつ、実はスミを深く愛していたという描写が少し欲しかった。

見ている間は気にならなかったが、このスパイたち、大きな事件には関わってこない。これはその後のストーリー展開にも関係してくるのでやはり何か大事件(大統領暗殺未遂とか)に関わらせた方が良かったと思う。韓国に住む北の大物スパイ“青川江”(ソン・ジェホ)の逮捕のエピソードは絡むものの、ラストへの説得力にはなっていないのである。これは「シュリ」との類似を避けた結果かもしれない。南北分断の悲劇を背景にしていることを除けば、話の展開に新しい部分は見当たらない。

【データ】2002年 韓国 2時間3分 配給:ギャガ=ヒューマックス 東映
監督:キム・ヒョンジョン 製作総指揮:パク・ムスン 製作:ク・ボンハン 共同製作:ハン・ソンギュ 脚本:シム・ヘウォン ペク・スンジェ キム・ジョンヘン キム・ヒョンジョン 撮影:キム・ソンボク 音楽:ミヒャエル・スタウダッハー プロダクション・デザイン:ノ・サンスン 衣装:イ・サンソプ
出演:ハン・ソッキュ コ・ソヨン チョン・ホジン ソン・ジェホ

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