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ナッティ・プロフェッサー2 クランプ家の面々

「ナッティ・プロフェッサー2」

天才的な頭脳を持つが、内気でデブでちょっと間抜けなクランプ教授が巻き起こすスラップスティックの第2弾。描写が下品、下ネタばかり、志が低い。結論を言えば、そんな映画である。1人9役も演じるエディ・マーフィーにもゲップが出るほどうんざりする。芸達者なのは良く分かっているが、必ずしもこんなに演じる必要があったのか、極めて疑問だ。もっとうまい役者に普通に演じさせた方が良かったのではないか。はっきり言ってエディ・マーフィーの中年女性やお婆ちゃん役は醜悪で気持ち悪いだけである。しかも同じパターンの演技なので飽きてしまうのだ。こういうのがアメリカ映画の普通のユーモアであったなら、僕は失望する。もともと最近のアメリカ映画はコメディの質が著しく低下しているのだけれど、それにしてもセンスの良さがまったく感じられない映画である。9役も演じるのは大変だっただろうが、それが少しも実を結んでいないのはエディ・マーフィーの不幸と言うべきか。

プロットそのものは悪くない。痩せ薬を扱った前作に対して今回は若返りの薬。クランプ教授の大学はこれを製薬会社に売り込もうとしている。クランプは同僚のデニース(ジャネット・ジャクソン)に思いを寄せ、デニースの方も憎からず思っているらしい。しかし、デニースの家に招かれた際、クランプの邪悪な人格バディ・ラブが出現し、デニースの両親の前で失態を演じてしまう。常々、バディの人格を消したがっていたクランプは自分の遺伝子からバディの部分を抽出(こんなことはできません)。フラスコに入った遺伝子抽出液を犬が落とし、その中に犬の毛が混じったことからバディが肉体を得て出現してしまう。しかも抽出の副作用でクランプの頭脳は徐々に低下していく。これと並行して若返りの薬をめぐり、クランプ家の面々が右往左往する。

独自のアイデアが少ないとはいえ、SF的な設定だから好意的に見たいのだが、アイデアの発展のさせ方が不十分である。徐々に知能が低下していくのを知ったクランプはネズミと迷路競争をして何度も負ける。「アルジャーノンに花束を」を意識したのがありありと分かる場面だが、所詮、パロディにしか過ぎない。このほか「アルマゲドン」などのパロディもあるけれど、その場の(下品な)おかしさで終わっている。映画全体から見れば、不要としか思えない場面が多すぎるのだ。思いつきのおかしさで、とりあえず場面を書いてみました、といったレベル。脚本に4人も名を連ねながら、どうしてこんなレベルのものしか書けないのか。それに輪をかけてピーター・シーガル(「裸の銃を持つ男33 1/3 最後の侮辱」)の演出も凡庸過ぎる。救いはジャネット・ジャクソンと彼女の歌う「ダズント・リアリー・マター」のみだった。

基本的にクランプ教授の役柄は人の良いタイプでないと成立しない。エディ・マーフィーの場合、どう見ても単純に人の良いキャラクターにはならない。クランプの分身、バディ・ラブの方が本来の持ち味であると思う。自分に向いていないことをはっきり認識した方がいいし、お願いだから第3作は作らないで欲しい。

【データ】2000年 アメリカ 1時間47分 ユニバーサル映画 UIP配給
監督:ピーター・シーガル 脚本:バリー・W・ブロウスタイン デヴィッド・シェフィールド ポール・ワイツ クリス・ワイツ 原案:スティーブ・オーデカーク バリー・W・ブロウスタイン デヴィッド・シェフィールド 製作:ブライアン・グレイザー 製作総指揮:ジェリー・ルイス エディ・マーフィー トム・シャドヤック カレン・ケヘラ ジェームズ・D・ブルベイカー 撮影:ディーン・セムラー プロダクション・デザイナー:ウィリアム・エリオット 視覚効果スーパーバイザー:ジョン・ファーハット 特殊メイクアップ:リック・ベイカー 衣装デザイン:シャレン・デイビス 音楽:デヴィッド・ニューマン
出演:エディ・マーフィー ジャネット・ジャクソン ラリー・ミラー ジョン・エルス リチャード・ギャント アンナ・マリア・ホースフォード メリンダ・マックグロウ ジェイマル・ミクソン

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