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マッドマックス 怒りのデス・ロード

「マッドマックス」第3作の「サンダードーム」から実に30年ぶりの第4作。直接的には「マッドマックス2」の世界観を受け継いでいる。石油と水が枯渇しそうになった核戦争後の世界で民衆を暴力で支配する集団から逃走する女たちとそれに協力するマックスの戦いを描く。

シンプルな復讐譚に圧倒的なスピード感を加えた第1作が好きだったので「マッドマックス2」に僕は違和感を覚えたが、一般的な評価は「2」の方が高く、「北斗の拳」に強く影響したことでも知られている。僕が「2」にあまり乗れなかったのは世界の描き方が不足していたからだ。荒廃した世界でのアクションというと、まず永井豪「バイオレンスジャック」があるし、あの傑作漫画の世界観に比べれば、「2」は世界の構築が甘い。その上、アクションが炸裂するクライマックスまで延々と待たされた感があった。マックスがアクションに動く動機も殺された妻子の復讐という第1作に比べて弱いと思った。

「怒りのデス・ロード」は「2」に比べて予算が大幅に増額されているようだ。悪の集団のボス、イモータン・ジョーやその息子の造型は「サンダードーム」にあったようなフリークス趣味で、世界の描き方もビジュアル的にはまずまず。それでもまだ広がりが足りないのはジョージ・ミラー監督が世界の構築よりもアクションの構築に主眼を置いているからだろう。最初から最後までほとんどアクションという構成は悪くない。ひたすら感心するような場面は実はなかったのだが、この激烈なアクションには見応えがあり、30年ぶりに作った価値は十分にあったと思う。ジャンキー・エックスウェルの音楽がとても効果的だ。

メル・ギブソンからマックス役をバトンタッチしたトム・ハーディは可もなく不可もなし。もう少し個性があると、映画が締まったのではないかと思う。その代わりに、片腕の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が良い。アクションだけでなく、故郷を喪失したと知って砂漠で慟哭する姿などは胸を打つ。さすが、セロン。

ジョージ・ミラー監督はキネ旬7月上旬号のインタビューで「音やセリフではなく映像で語る、ヒッチコック的アプローチ」を取ったと語っている。序盤にセリフが少ないのはそういう理由で、確かにセリフなしでも分かる展開だった。ただ、僕は見ていてヒッチコックよりもサイレント映画のアクション・コメディをぼんやり思い浮かべていた。

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