マトリックス リローデッド
「マトリックス」の4年ぶりの続編。鮮烈なアクションシーンをつないだ予告編を見て本編への期待が大きく膨らんだが、結局、予告編を超えるインパクトはなかった。アクションの撮り方、見せ方は大変良いのに物語の語り方がまったく駄目である。最初に延々とあるザイオン(仮想現実から目覚めた人類の都市)の描写はまだるっこしくて仕方なく、まるでかつての東宝怪獣映画や「マッド・マックス2」を思わせる、ありきたりで貧相な人類の描き方には大きく失望せざるを得ない。新たなビジョンのかけらもありゃしない。その後の本筋の話も分かりにくく、面白い話を思いついたのに話を構築していく際に失敗したなという感じがありあり。時間が足りなかったのだろうか。これは単にネオ(キアヌ・リーブス)とトリニティー(キャリー=アン・モス)の愛を中心に据えて、なんだかよく分からないマトリックスの話を(分からなくてもなってもいいから)ばっさり省略して簡単にまとめてしまえば何とかなったのではないか。アクションを生かす話に再編集してはどうか。
一番の問題はエモーションに欠けていることにある。ネオが見る夢の中でトリニティーの死が冒頭に描かれる。これは当然、クライマックスにリピートされるのだが、それだけのことで、物語と有機的につながっていかない。マトリックスの秘密をこれにどう組み合わせるかが、脚本の腕の見せ所なのに、どうもうまくない。トリニティーの運命を暗示するようなエピソードが中盤にほしいところだった。最初の10分とラストの30分だけで十分なのである。
人類を支配するA.Iが地下深くにある都市ザイオンを攻めてくると知ったモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)やネオたちが、マトリックスの世界に入り、それを阻止しようとするのが基本プロット(「ドリームキャッチャー」に併映された「アニマトリックス」の「ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス」に絡むセリフがある)。これに前作ではエージェント・スミス、今回はエージェントではなくなったスミス(ヒューゴ・ウィービング)とネオの確執が絡む。前作で破壊されたスミスはネオへの復讐心に燃え、システムに叛逆して存在し、自分を無数に増殖をさせる能力を身につけている。今回はつまり、ネオに対してA.Iとスミスがそれぞれに攻撃を仕掛けてくるのである。話の構図としては悪くないのだが、どうもすっきりしない。スミスに時間を割きすぎたのも一因なのではないかと思う。スミスのキャラクターが前作と変わっているのは完結編への伏線だろうが、基本的にネオの行動を邪魔するだけの役柄なので、前作同様、A.Iの手先にしか見えてこない。
アクションシーンは中盤にある多数のスミスとネオの戦いと、クライマックスの高速道路でのツインズ(ニール&エイドリアン・レイメント)との戦いがCGを駆使して良くできている。良くできてはいるが、エモーションに欠けるので、単なる見せ物である。前作では新鮮だったカンフー・アクションが今となってはハリウッド映画で普通になってしまったのもデメリットだろう。
ラスト近く、現実世界のネオに新たな変化が訪れる。完結編ではこれをどう活用するのか。くれぐれも今回のようなことがないようにしてほしいものだ。
【データ】2003年 アメリカ 2時間18分 配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・脚本・製作総指揮:アンディ&ラリィ・ウォシャウスキー兄弟 製作:ジョエル・シルバー 製作総指揮:グラント・ヒル ブルース・バーマン 撮影:ビル・ポープ 音楽:オーウィン・パターソン 音楽・指揮:ドン・デイビス 視覚効果監修:ジョン・ゲイター 衣装:キム・バレット
出演:キアヌ・リーブス ローレンス・フィッシュバーン キャリー=アン・モス ヒューゴ・ウィービング ジャダ・ピンケット・スミス グロリア・フォスター モニカ・ベルッチ コリン・チャウ ノーナ・ゲイ ランダル・ダク・キム ハリー・レニックス ハロルド・ペリノー ニール&エイドリアン・レイメント ランバート・ウィルソン アンソニー・ウォン ヘルムート・バカイティス クレイン・ワトソン アンソニー・ザーブ