It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

13ウォーリアーズ

「13ウォーリアーズ」

マイケル・クライトン「北人伝説」(EATERS OF THE DEAD)を原作にジョン・マクティアナンが監督したアクション映画。中世を舞台にしたヒロイック・ファンタジーのような設定だが、“剣と魔法”の剣はあっても魔法はないから、なんとなく物足りない。ジェリー・ゴールドスミスの音楽に随分助けられているし、出来そのものも決して悪くはないが、130億円もかけた超大作にはとても思えず、「七人の侍」を意識したと思われる雨の中の戦闘シーンも極めてあっさり終わる。盛り上がる場面がなく、原作のダイジェストになってしまっているのである。アントニオ・バンデラスも主人公として活躍の場があまりない。これならば、アクションができるバンデラスを起用する意味はなかったのではないかと思う。

アラブの詩人イブン(アントニオ・バンデラス)は人妻に恋をしたため、辺境の地の大使として国を追われる。従者メルチシデク(オマー・シャリフ)とともに旅を続ける途中、勇猛な北方の民の一団と出会う(原作によると、これはバイキングだ)。そこに霧の中から現れるという魔物に蹂躙される国の少年が助けを求めてくる。巫女の占いによると、国を救うには13人の戦士が必要。男たちは次々に名乗りを挙げるが、13人目の戦士は国外の者が必要とされ、イブンも戦士に選ばれてしまう。一行がたどり着いた国(というかほとんど集落)の住民の話では、魔物は“ヴェンドル”と呼ばれ、人を食う怪物の集団だった。森の中の小屋には食いちぎられた死体が残っていた。その夜、魔物たちが襲ってくる。そして戦士と魔物たちの決死の戦いが始まる。

原題の「13番目の戦士」が邦題ではなぜか「13人の戦士」に変わっている。その割には戦士たちのキャラクターの描き分けが不鮮明。大男のブルヴァイ(ウラジミール・クリッヒ)と策略家のハージャー(デニス・ストーイ)ぐらいしか印象に残らない。これが侍たちの個性が豊だった「七人の侍」に比べるべくもない理由。魔物の正体もマイケル・クライトンらしい設定ではあるが、ちょっと期待はずれだ。第一、魔物のボスの描き方が不十分であんなに簡単にやられてしまっては、なんだたいした敵じゃないなと思えてしまう。

日本での公開順序は逆になったが、これはマクティアナンが昨年の「トーマス・クラウン・アフェアー」の前に撮った作品で、マクティアナンは得意のアクション分野でうまくいかなかったから、タッチを変えて「トーマス…」を撮ったのではないか、と邪推したくなる。バンデラスとゲスト出演的なオマー・シャリフを除けば、ノースターといえる映画で、その分、セットなどに予算をかけたのだろう。大作の雰囲気はないが、登場する騎馬の数は確かに大作並み。それを生かし切れていないことが惜しまれる。

【データ】1999年 アメリカ 1時間42分 ギャガ・ヒューマックス配給
 監督:ジョン・マクティアナン 原作:マイケル・クライトン「北人伝説」(EATERS  OF THE  DEAD) 脚色:ウィリアム・ウィッシャー ウォーレン・ルイス 撮影:ピーター・メンジスJr. 音楽:ジェリー・ゴールドスミス 衣装デザイン:ケイト・ハリントン 美術:ウォルフ・クルーガー 製作総指揮:アンドリュー・G・ヴァイナイ イーサン・ダブロウ
出演:アントニオ・バンデラス ダイアン・ベノーラ オマー・シャリフ デニス・ストーイ ウラジミール・クリッヒ リチャード・ブレマー トニー・カラン ミーシャ・ハウザーマン ネイル・マフィン アスビョルン・リイス クライヴ・ラッセル ダニエル・サウザン オリバー・スヴェイナル アルビー・ウッディントン ジョン・デ・サンティス

TOP