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アイ・アム・レジェンド

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リチャード・マシスン原作の3度目の映画化。ウィルスの蔓延で地球に一人生き残った男の孤独と戦いの日々を描く。最初の映画化である1964年の「地球最後の男」(ウバルド・ラゴーナ、シドニー・サルコウ監督、ビンセント・プライス主演)はジョージ・A・ロメロの傑作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の原型となったことで有名だ。闇にうごめくゾンビたちの姿と虚無感・絶望感あふれる作りは「ナイト・オブ…」のそれと非常によく似ている。

今回の映画にあるのは主人公の絶対的な寂寥感と廃墟となったニューヨークの優れたビジュアル、そしてホラーの味わい。特に寂寥感とビジュアルな部分が大変良い。主人公ウィル・スミスは孤独に苛まれながらも「闇を照らす」ためにワクチンの研究に打ち込む。64年版では「アイ・アム・レジェンド」の意味が終盤に分かって、それはそれで皮肉な効果をもたらしていたが、今回は意味を違え、よりストレートな作りになっている。希望があるのである。旧作を見ている観客を意識したと思える部分が終盤にあり、脚本のマーク・プロストビッチ、アキバ・ゴールズマンは良い仕事をしていると思う。ビジュアルな部分はフランシス・ローレンス監督の資質が良い方向に出た結果だろう。第2班(アクション・ユニット)監督のヴィク・アームストロングもいつものように優れた仕事をしていて、切れ味のあるアクション場面を演出している。これにスミスの好演とジェームズ・ニュートン・ハワードの哀切な音楽とが相まって、破滅SFとしてきちんとまとまった作品に仕上がった。チャールトン・ヘストン主演の「地球最後の男 オメガマン」(1971年)を含めて同じ原作3本の映画のうち、今回が最も良い出来だと思う。

がんの特効薬が発明され、人類はついにがんを克服したというニュースが流れる。その3年後、ニューヨークは廃墟と化していた。主人公の科学者ロバート・ネビル(ウィル・スミス)は都会のど真ん中で愛犬サムとともに車を走らせ、鹿狩りを楽しむ。他の人間は皆、がんの特効薬から派生したウィルスの蔓延で死んでしまった。ネビルには免疫があり、生き残ったのだ。ネビルはもしかしたらどこかに生き残っているかもしれない人間に対して全周波数で「You are not alone」と呼びかける。そして厳重に戸締まりをして眠れない夜を過ごす。ウィルスで凶暴に変異したダーク・シーカーズ(闇の住人)の襲撃に備えるためだ。同時にネビルはネズミや捕らえたダーク・シーカーズを使ってワクチンの研究を続けているが、失敗の連続。ようやく効果があると思われるワクチンを開発するが、ダーク・シーカーズの罠に落ちてしまう。

ウィルスの蔓延で世界が破滅するという話は大昔からあり、ゾンビたちがうごめく世界というのも全然珍しくはないが、この映画を同種の映画から際だたせているのはビジュアル面の優秀さだ。パンフレットによれば、実際にニューヨークの一部の区画を封鎖して200日間にわたって撮影したという。人っ子一人いないニューヨークの荒んだ光景は主人公の寂寥感を強調するのに大きな効果を上げている。

フランシス・ローレンスは前作「コンスタンティン」ではスタイリッシュなビジュアル部分には感心したものの、必ずしもストーリーテリングがうまくいっているとは思えなかった。今回はビジュアル、物語とも破綻がない。ウィル・スミスは考えてみると、SF映画への出演が多い俳優だ。「アイ、ロボット」も良い出来だった。

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