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シネマ1987online

アンドリューNDR114

「アンドリューNDR114」

アイザック・アシモフの原作を映画化したSFラブ・ストーリー、と言っていいと思う。愛のためにロボットが人間になろうとする話。原作では人間とロボットの違いを明示することで、死を避けられない人間の素晴らしさを強調していた。映画はそんな側面を継承しつつもラブ・ストーリーに重点を置いているのである。そしてこのことで元のテーマも明確に浮かび上がっている。人間には感情があるから、愛することができるから素晴らしい、というテーマ。200年にわたる話なので、駆け足の描写もあるけれど、ロボットに扮するロビン・ウィリアムズと彼が愛する女性ポーシャ役のエンベス・デイビッツの清潔感が良く、クリス・コロンバスの演出も水準を維持している。

アイザック・アシモフの原作を映画化したSFラブ・ストーリー、と言っていいと思う。愛のためにロボットが人間になろうとする話。原作では人間とロボットの違いを明示することで、死を避けられない人間の素晴らしさを強調していた。映画はそんな側面を継承しつつもラブ・ストーリーに重点を置いているのである。そしてこのことで元のテーマも明確に浮かび上がっている。人間には感情があるから、愛することができるから素晴らしい、というテーマ。200年にわたる話なので、駆け足の描写もあるけれど、ロボットに扮するロビン・ウィリアムズと彼が愛する女性ポーシャ役のエンベス・デイビッツの清潔感が良く、クリス・コロンバスの演出も水準を維持している。

主人公のアンドリュー(ロビン・ウィリアムズ)は料理、掃除、子どもの遊び相手などをする人間型ロボット(アンドロイド)。郊外に住むマーティン家の父親リチャード(サム・ニール)が購入した。マーティン家は妻(ウェンディ・クルーソン)と長女(リンジー・リザーマン)、次女(ハリー・ケイト・アイゼンバーグ)の4人暮らし。名前はリトル・ミスと呼ばれる次女が“アンドロイド”を“アンドリュー”と間違えたことで決まった。その晩、意地悪な長女はアンドリューに2階の窓から飛び降りるように命じる。アンドリューは命令に従い、体に大きなダメージを負う。これを機会にリチャードはアンドリューを人間と同等に扱うよう娘たちに命じる。ある日、アンドリューはリトル・ミスが大事にしていた小さなガラスの馬を壊してしまう。「アンドリューなんて大嫌い」といわれたアンドリューは木工の本を読み、木彫りの馬をプレゼントする。アンドリューには学習能力のほかに普通のロボットにはない創造性があった。そして以後、リトル・ミスとアンドリューは交流を深めていく。

映画はこの後、成長したリトル・ミス(エンベス・デイビッツ)の結婚、リチャードの死、リトル・ミスの孫娘ポーシャ(デイビッツの2役)との出会いと続く。この過程でアンドリューは自分の特殊性を認識し、同時に人間に近づきたいと思うようになる。服を着るようになり、人工の皮膚を付け、感情を持つようにアップグレードしていく。そしてポーシャとの愛に目覚め、より完全な人間になろうと決意するのだ。ポーシャはデイビッツの2役であるため、アンドリューにとっても観客にとってもこの2人の愛は“200年にわたる愛”のように思えてくる。ここが映画の独自性で、時の流れには勝てない人間の哀しさ、それにもかかわらず、だからこそ人間は素晴らしいという訴えが浮き彫りになってくる。

SFラブ・ストーリーと書いたけれど、これが明確になるのは映画が3分の2を過ぎたあたりから。なにしろ半分ぐらいまでアンドリューは機械の顔のままなのだ。もっと早くから2人の愛に焦点を絞った方が良かったかもしれない。それと気になったのは、アンドリューの特殊性がどこから生まれたのか分からないこと。製造工程で回路に異常を来した単なる欠陥商品だったのか、それとも2階の窓から飛び降りて壊れたのが原因で特殊になったのか。物語の発端に関する部分なので、ここをしっかり描いて欲しかったと思う。

【データ】1999年 アメリカ 2時間11分 コロンビア映画・タッチストーン映画 配給:ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント
監督:クリス・コロンバス 原作:アイザック・アシモフ「バイセンテニアル・マン」(創元SF文庫「聖者の行進」所収) ロバート・シルバーバーグ「アンドリューNDR114」(創元SF文庫・アシモフの中編を長編化したもの) 脚色:ニコラス・カザン 製作:ウォルフガング・ペーターゼン ゲイル・カッツ ローレンス・マーク ニール・ミラー クリス・コロンバス マイケル・バーナサン 製作総指揮:ダン・コルスラッド 撮影:フィル・メイヒュー 美術:ノーマン・レイノルズ 衣装デザイン:ジョゼフ・G・アウリシ 音楽:ジェームズ・ホーナー 主題歌「ゼン・ユー・ルック・アット・ミー」(セリーヌ・ディオン)
 出演:ロビン・ウィリアムズ エンベス・デイビッツ サム・ニール オリバー・プラット キルスティン・ウォーレン ウェンディ・クルーソン ハリー・ケイト・アイゼンバーグ リンジー・リザーマン アンジャラ・ランディス ジョン・マイケル・ヒギンズ ブラッドリー・ウィットフォード イゴー・ヒラー

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