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シネマ1987online

エリザベス

「エリザベス」パンフレット

ジェフリー・ラッシュとジョセフ・ファインズが出演し、イギリスのコスチュームプレイとくれば、「恋におちたシェイクスピア」を思い出さずにはいられない。だが、この「エリザベス」、軟派なラブストーリー「…シェイクスピア」とは違い、ガッチガチの硬派な映画である。冒頭の残酷な火あぶりのシーンをはじめ、画面は終始、緊張感にあふれ、息つく暇もない2時間4分。今年のアカデミー賞(7部門ノミネート、メイクアップ賞のみ受賞)で「…シェイクスピア」に敗れたのは、あちらが分かりやすい大衆性を備えていたからで、この作品が劣っているわけでは決してない。

16世紀のイングランド。カトリックとプロテスタントの間で熾烈な争いが続き、国は2つに分裂していた。エリザベス(ケイト・ブランシェット)は国王ヘンリー8世の私生児として生まれ、今の女王メアリーは異母姉に当たる。プロテスタントを信奉するエリザベスはカトリックが多い閣僚たちの陰謀でロンドン塔に幽閉されるが、姉の死によって女王の座に就くことになる。エリザベスが女王にいてはカトリック派の衰退は必至。このためカトリック派の議員や聖職者らはローマ法王の後押しも得て、エリザベスの失脚を狙う。さらにスコットランド、スペイン、フランスなどとの争いも絡み、エリザベスは絶えず命の危険にさらされることになる。

最初は幼なじみロバート・ダドリー(ジョセフ・ファインズ)との恋に生きる、か弱い女性として登場したエリザベスが陰謀に巻き込まれていくうちにたくましい女王へと変わっていく。その変貌をケイト・ブランシェットは説得力ある演技で見せる。キャリアの浅い女優とは思えない貫禄。脇を固めるジェフリー・ラッシュやリチャード・アッテンボローも映画に重厚感を与えている。この映画、俳優たちの演技がみな素晴らしい。さらに登場人物たちの衣装や美術も絢爛豪華。インド出身の監督シェカール・カプール(「女盗賊プーラン」)は正攻法の演出でこうした素材を縦横にうまく組み立て、間然とするところがない。

ただ、こうした重厚な映画な割には、ストーリーが現実を端折り過ぎているような気がする。もっと細かく、もっと詳細にエリザベスの生涯を見たくなる。3時間はあってもおかしくなかった。

【データ】1998年 イギリス映画 2時間4分
監督:シェカール・カプール  脚本:マイケル・ハースト 音楽:デヴッィド・ハーシュフェルダー 撮影:レミ・エイドファラシン
出演:ケイト・ブランシェット ジェフリー・ラッシュ クリストファー・エクルストン ジョセフ・ファインズ リチャード・アッテンボロー ファニー・アルダン ジョン・ギールグッド

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