奇蹟の輝き
What Dreams May Come
アカデミー視覚効果賞受賞。あまり良い評判は聞いていなかったので、とりあえず、SFXだけを楽しみに見たが、ほとんど失望した。昨年のアメリカ映画の視覚効果って、この程度のものだったんでしょうかね。いや、これならば「スターシップ・トゥルーパーズ」の方が数段素晴らしい。なぜ受賞したのか不思議でしょうがない。ありきたりのイメージに、ありきたりのSFX。ストーリーにも見るべきところがない。そのうえ演出にもメリハリがないときてはどうしようもない。ロビン・ウィリアムスとアナベラ・シオラ。奇蹟も輝きもない映画のなかで精一杯頑張っている贔屓の俳優2人がひたすらかわいそうである。
ストーリーは簡単だ。2人の子どもを交通事故で亡くした医師(ロビン・ウィリアムス)が自らも交通事故に巻き込まれて死んでしまう。前半はこの主人公が歩く死後の世界の描写。2人の子どもの想い出を交えながら進行する。妻(アナベラ・シオラ)は子どもを亡くしたことに責任を感じて少しおかしくなっている。そして夫までもが死んでしまったことで、悲嘆のあまり、自殺してしまう。自殺したものは地獄に行くさだめ。後半は主人公が地獄に堕ちた妻を探しだし、助ける様子が描かれる。
ミステリマガジン7月号の「読ホリディ」によると、才人リチャード・マシスンの原作も今回は「どうもぱっとしない」出来という。都築道夫はこの中で「地獄で妻をさがすプロセスも地味な話になっていて、感情はよく書けているが、あまり動きはない。たいへん失礼な想像だが、マシスン氏はこれを、奥さんを亡くした時期に構想を得て書いたのではないだろうか。そうだとすれば、感傷の深さ、あふれる哀愁も、よくわかる」と喝破している。
これはそのまま映画にもあてはまる。原作がどうなっているか知らないが、後半の妻を助ける部分をもっと膨らませられれば、映画はもっと違った印象になったはずである。極めて新鮮みのない天国の描写に比べて、暗く恐ろしい地獄の描写(無数の人が顔だけ出して埋められている場面は気味が悪く、怖い)は悪くないのだから、ここでの主人公の活躍をもっと描いて欲しかった。主人公と妻の愛情の深さ、魂の結びつきの深さも十分には描き切れているとはいえないから、ラストの“奇蹟”(と呼べるほどではない)にも説得力がない。
ロン・バスの脚本も良くないが、それを単調に絵に置き換えることしかできなかったヴィンセント・ウォードの演出はもっと責められてしかるべきだろう。ロビン・ウィリアムスを起用しながら、「大霊界」を思い起こさせるような内容にしかならないのでは悲しくなる。地獄の案内役を務める老優マックス・フォン・シドウの渋い演技とマイケル・ケイメンの美しい音楽のみが凡庸な映画の中でかすかな輝きを放っていた。
【データ】1998年アメリカ映画 1時間54分
監督 ヴィンセント・ウォード 原作 リチャード・マシスン
脚本 ロン・バス 音楽 マイケル・カーメン
キャスト ロビン・ウイリアムス アナベラ・シオラ キューバ・グッディング.jr マックス・フォン・シドウ