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キス・オブ・ザ・ドラゴン

「キス・オブ・ザ・ドラゴン」

ジェット・リー主演のアクション映画。麻薬組織の幹部逮捕に協力するためパリに行った中国の捜査官が殺人の濡れ衣を着せられ、悪徳警部率いる組織と戦う。監督は新鋭のクリス・ナオンだが、製作・脚本のリュック・ベッソンの映画に雰囲気がよく似ている。凶暴で狡猾な悪徳警部の設定は「レオン」のゲイリー・オールドマンを彷彿させ、クレイグ・アームストロングの音楽も「レオン」のようにセンチメンタル。ホテル、街頭、船上、警察署で次々に繰り広げられるジェット・リーのキレのあるアクションは素晴らしく、ブリジット・フォンダ演じるヤク中の薄幸な娼婦役もぴたりと決まっている。「レオン」のような強いエモーションには欠けているけれど、アクション映画の定石を踏まえ、きっちりと楽しませてくれる佳作。リーの寡黙な在り方はいかにも武術家出身らしい好ましさ(クライマックスの警察署殴り込みシーンは高倉健の映画をイメージしたという)で、時折見せる人なつこい笑顔もいい。根強いファンは多いが、もっと一般的な人気が出ていいスターだと思う。

中国のエリート捜査官リュウ(ジェット・リー)がパリ・ドゴール空港に降り立つ。フランスと中国の間で麻薬密売を企てている中国人ギャング、ソングの逮捕に協力するためだ。リュウはチャイナタウンのアンクル・タイ(バート・クウォーク)の店に居を借り、約束のホテルに向かう。フランス側の捜査の責任者はリチャード警部(チェッキー・カリョ)。リチャードはリュウの拳銃とパスポートを不要だからと預かり、無防備のまま捜査に協力させる。ソングが数人のボディガードとともに到着。そこに2人の女ジェシカ(ブリジット・フォンダ)とアジャ(ローレンス・アシュレイ)が現れ、ソングとともに部屋に入る。ソングのボディガードが部屋から出た途端、アジャがソングを襲う。テレビカメラで監視していたリュウは部屋に駆けつけてアジャを止めるが、後から来たリチャードはアジャとソングをリュウの拳銃で撃ち殺し、リュウを罪に陥れようとする。リュウはリチャードの殺人の場面を録画したテープを盗み、部下の襲撃から必死の思いで逃れて、アンクルの店に帰る。

ホテルで生き残ったジェシカは実はリチャードの愛人で、麻薬に縛られて逃げ出せないでいる。またも麻薬をうたれ、街角に立たされる。そこはチャイナタウンでアンクル・タイの店の前、というのは実に都合のいい展開だが、見ている間はあまり気にならない。店にトイレを借りに来たジェシカとリュウの間に次第に交流が芽生え、ジェシカの娘がリチャードに奪われ、孤児院に入れられていると知ったリュウはジェシカと協力し、自分の身の潔白を証明すると共に、娘を取り戻そうとする。プロット的には簡単な映画だが、満載されたアクションと主役リー、フォンダ、カリョの3人の演技で飽きさせない。

ジェット・リーは製作にも名をつらね、アクション場面で自らアイデアを出したという(アクション監督は長年リーと組んでいるコーリー・ユエン)。ジャッキー・チェンのような危険と隣り合わせのスペクタル性には欠けるが、各場面を的確にこなし、アクション映画の主役としては申し分ない。ハイヒールを履いたフォンダと背の高さが逆転しているのはちょっと残念で、これは演出次第でどうにでもなると思う。CM出身のクリス・ナオンの演出はスピーディーで、映画第1作としては合格点だろう。ただし、リュック・ベッソンの影響がかなりあったらしく、演出に個性的なものは見えてこない。真の評価には次の作品を待つ必要がある。

【データ】2001年 アメリカ=フランス 1時間38分 配給:K2
監督:クリス・ナオン 製作:リュック・ベッソン ジェット・リー スティーブン・チャズマン ハッピー・ウォルターズ 脚本:リュック・ベッソン ロバート・マーク・ケイメン アクション監督:コーリー・ユエン 音楽:クレイグ・アームストロング 撮影:ティエリー・アルボガスト プロダクション・デザイン:ジャック・ブフノワ
出演:ジェット・リー ブリジット・フォンダ チェッキー・カリョ ローレンス・アシュレイ バート・クウォーク シリル・ラフェーリ ディディエ・アズーレイ ジョン・フォーガム ヴィンセント・ウォン コリン・プリンス 

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