It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」パンフレット「2匹のネズミがクリームの缶の中に落ちた。1匹はすぐにあきらめて溺れ死んでしまった。もう1匹は必死に手足を動かしてもがいているうちにクリームがバターになり、缶から出ることができた」

冒頭、主人公の父親が地元名士の集まりで披露した小話。そして父親は「必死にもがく2番目のネズミが自分だ」と自己紹介する。父親を演じる老けたクリストファー・ウォーケンがいい。この映画、高校生の詐欺師(レオナルド・ディカプリオ)とそれを追うFBI捜査官(トム・ハンクス)の話なのだが、根底に父親と息子の絆をしっかりと描いてある。最近のスピルバーグ映画では描写の暗さ、残酷さに閉口した「マイノリティ・リポート」と違って、ユーモラスで明るいタッチが快い。60年代の風俗、ファッションが忠実に再現され、ジョン・ウィリアムスの音楽も軽快。ちょっと長いのが欠点だが、レオナルド・ディカプリオの年齢設定ぎりぎりの好演とトム・ハンクスの余裕の演技が加わって楽しめる映画に仕上がっている。

タイトルに流れるアニメーションから60年代風を意識したようだ。フランク・アバグネイルJr(レオナルド・ディカプリオ)は事業家の父親とフランス人の母親(ナタリー・バイ)との幸福な家庭で育ったが、父が脱税容疑を受け、事業は失敗。郊外にある家から街中の狭いアパートに引っ越す。母親は愛人を作って離婚。家出したフランクはパンナムのパイロットの制服を利用し、小切手詐欺を次々に成功させるようになる。FBIの捜査官カール・ハンラティ(トム・ハンクス)は地道な捜査で着実にフランクを追い詰めてゆく。

原作は実話。主人公がパイロットや弁護士になるのは人が制服や地位に騙されやすいからにほかならない。スピルバーグの演出は頑張っていて、数々のエピソードをテキパキと見せていくのだが、短いエピソードばかりなので、「スティング」のようなコンゲーム的な面白さには欠ける。父と息子のテーマは意外に重たいため(というか、ウォーケンの演技も重い)、軽妙にまとめるには至らなかった。たぶん、映画には真面目なドラマがなくてはと、スピルバーグは思っているのだろう。再び始めた事業にも失敗し、風采の上がらないウォーケンには捨てがたい魅力があるものの、やはりこれは軽快に徹して作る映画だったのではないかと思う。ラスト近く、主人公がFBIを逃げ出して帰ってくる描写など回りくどさを感じた。全盛期のビリー・ワイルダーやウィリアム・ワイラーあたりなら、1時間40分程度でもっと洒落た映画に仕上げたのではないかと思ってしまうのは、ないものねだりか。

【データ】2002年 アメリカ 2時間21分 配給UIP
監督:スティーブン・スピルバーグ 製作:ウォルター・F・パークス 製作総指揮:ハリー・ケンプ ローリー・マクドナルド ミシェル・シェーン ロニー・ロマーノ 共同製作総指揮:ダニエル・ルピ 原作:フランク・アバネイル「世界をだました男」(新潮文庫) 脚本:ジョン・ネイサンソン 撮影:ヤヌス・カミンスキー プロダクション・デザイン:ジャニーニ・オッペウォール 衣装:メアリー・ゾフレス 音楽:ジョン・ウィリアムス
出演:レオナルド・ディカプリオ トム・ハンクス クリストファー・ウォーケン マーティン・シーン ナタリー・バイ エイミー・アダムス ジェニファー・ガーナー

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