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シネマ1987online

キング・アーサー

「キング・アーサー」パンフレット

アーサー王伝説を「トロイ」には十分勝っている。ジェリー・ブラッカイマー製作の映画にしては珍しく、骨太の映画に仕上がっている。

中盤、アーサーたちは最後の任務でハドリアヌス城壁を越えて、北の地方にいる一家を助けに行く。そこでアーサーたちが見たのはキリスト教の布教を理由に現地の人々を苦しめる愚かな司祭。アーサーは懲罰を受けている長老を助け、閉じこめられた蛮族ウォードの女と子どもを救出する(ここでようやくヒロイン、キーラ・ナイトレイが登場するのだった)。自由と平等をローマ人の司祭から教わったアーサーはここで行われていることを見て、愕然とする。表面とは裏腹に腐敗したローマ帝国に対する怒りがわき上がってくるのだ。村には凶暴なサクソン人が迫っており、アーサーたちは村の人々も一緒に連れて帰ろうとする。ここから氷った湖上でのサクソン人との対決までがこの映画の白眉。フークア監督は文句の付けようのない場面に仕上げている。

映画はローマ帝国とウォードとサクソンの三つどもえの状態から、アーサーとウォードが手を組んでサクソンの侵略に対抗する流れを見せ、クライマックスはハドリアヌス城壁でのスペクタクルな戦闘シーンが描かれる。ここは黒沢明「七人の侍」風の展開で、スペクタクル的にはあまり演出がうまいとは言えない。しかし、ローマ帝国の兵士として15年間戦ってきたアーサーがそれと決別して民衆のための戦いを繰り広げるわけだから、心情的には納得のいくものとなっている。

アーサーを演じるクライブ・オーウェンが地味なので、最初に登場するランスロット(ヨアン・グリフィズ)が主人公かと思った。他の出演者もグウィネヴィア役のキーラ・ナイトレイを除けば、地味な役者ばかりだが、それぞれに渋い味を出していて悪くない。ナイトレイは薄汚れた格好で登場した後、お約束通り、美女に変貌していく。弓の引き方も決まっており、好感度が高い。

【データ】2004年 アメリカ 2時間6分 配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
監督:アントワン・フークア 製作:ジェリー・ブラッカイマー 製作総指揮:マイク・ステンソン チャド・オーマン ネッド・ダウド 脚本:デヴィッド・フランゾーニ 撮影:スラヴォミール・イジャック プロダクション・デザイン:ダン・ウェイル 衣装:ペニー・ローズ 音楽:ハンス・ジマー
出演:クライブ・オーウェン キーラ・ナイトレイ ヨアン・グリフィズ スティーブン・ディレイン ステラ・スカルスゲールド レイ・ウィンストン ティル・シュヴァイガー ヒュー・ダンシー ジョエル・エドガートン マッツ・ミケルセン レイ・スティーブンンソン

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