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シネマ1987online

プリンス・オブ・エジプト

THE PRINCE OF EGYPT

旧約聖書「出エジプト記」のCGIを多用したアニメ化。クライマックスの海が割れるシーンをはじめ見応えのある部分が多く、ミュージカルタッチの場面も楽しい。声優の豪華さも売りなのだろうから、吹き替え版がないのは残念だが、家族そろって楽しめる映画ではある。ただ、セシル・B・デミル「十戒」と同じ話を1時間39分にまとめているので、いくらか駆け足になったり、ダイジェスト的になったことは否めない。

紀元前1300年、エジプト。ヘブライの民たちは奴隷として巨大建造物の作業にかり出され、苦しい毎日を送っていた。子どもにだけは自由を与えたいと、母親は生まれたばかりのモーセ(ヴァル・キルマー)をかごに入れてナイル川に流す。かごは宮殿に流れ着き、王女に気に入られたモーセは王子として成長する。王位を継ぐ兄ラメセス(レイフ・ファインズ)とともに、モーセは何不自由ない宮殿の生活を楽しんでいたが、ある日、村で偶然出会った実の姉ミリアム(サンドラ・ブロック)から出生の秘密を明かされる。奴隷の境遇に初めて目を向けたモーセは、その悲惨な境遇に耐えられなくなる。そして老人をむち打っていた監視役を殺してしまい、宮殿を脱出。たどり着いた砂漠の村で、羊飼いとして暮らすことになる。そこでモーセは神の啓示を受け、ヘブライの民を救い、伝説の約束の地に向かうことを決意する。

あまりにも有名な話だから、どうアニメ化するかが問題になる。ブレンダ・チャップマンら3人の監督は、ポイントを押さえて映像化に力を入れる方法を採ったようである。つまり丹念に筋を追っていたのでは「十戒」のように4時間の映画になってしまうから、ある程度承知の上でダイジェスト版的内容にし、スペクタクルに徹したのだろう。それでも、押さえるべきところはきちんと押さえてある。モーセが奴隷の本当の生活を知り、それまでの考えを一変する場面などは非常に納得できる描写である。

海が割れる場面以外にも技術的に感心する部分は多く、宮殿の壁画が動いてモーセが王の実体を知る場面やエジプトに火の雨が降る場面、ヘブライの大群衆がモーセに率いられてエジプトを脱出する場面などCGIを使用した場面はどれもレベルが高い。実写でも通用しそうな出来である。

「となりの山田くん」と見比べると、世界でも高水準といわれる日本のアニメ技術も危ういなという印象を持つ。残念なのはキャラクターデザインで、どうしてアメリカのアニメって、こういう感情移入を拒否するような顔しか描けないんでしょうかね。普通に美男美女を描けばいいのに、デフォルメが過ぎると思う。

【データ】1998年アメリカ映画 1時間39分
 監督 ブレンダ・チャップマン スティーブ・ヒックナー サイモン・ウエルズ 音楽 ハンス・ジマー  
声の出演 ヴァル・キルマー レイフ・ファインズ ミシェル・ファイファー サンドラ・ブロック ジェフ・ゴールドブラム ダニー・グローバー パトリック・スチュワート ヘレン・ミレン スティーブ・マーチン マーチン・ショート

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