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ハリー・ポッターと秘密の部屋

「ハリー・ポッターと秘密の部屋」

ホグワーツ魔法学校で2年目に入ったハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)とハーマイオニー(エマ・ワトソン)、ロン(ルパート・グリント)の3人が学校にある秘密の部屋を巡って冒険を繰り広げる。キャラクターの紹介は前作「ハリー・ポッターと賢者の石」で終わっているので、早く本筋を展開させればいいのに、秘密の部屋がメインになるのは中盤以降。それまでは前作の繰り返しみたいな描写が多い。中盤の巨大なクモやクライマックスの大蛇などSFXを所々に挟んでおり、退屈しないような作りにはなっているが、話自体はなんというか、簡単である。ヒネリは少なく、エモーションが高まるのでもなく、極めて平板な冒険ファンタジー。このあたり、原作が童話であることの限界のようだ。子供が主人公だから子供が喜ぶのは分かるが、この程度の話に大人が熱狂するのはいかがなものか。加えていくら何でも2時間41分は長すぎる。頭のいい脚本家と監督が手がけたら、1時間半で終わる話である。子供にとっても1時間半程度が集中力を持って映画を見る限界だろう。話をギュッと凝縮させて密度を濃くした方が良かった。大作になりようがない小さな話を無理に大作に仕立て上げた破綻がかいま見える。

よく分からないのはなぜハリーにもっと活躍させないのかということ。いや、もちろん、事件を解決するのはハリーの力なのだが、特に能力的に優れた部分は見当たらないのだ。ヒーローがヒーローたり得ていないところが、大いに不満。(前作での活躍があったとはいえ)なぜ周囲がハリーを英雄視するのかよく伝わってこない。これは端的に脚本のミスではないのか。目新しさが減った分、前作よりも面白みには欠ける。あまりオリジナリティーがあるとは思えない話と出来そのものはあまり良くないSFXだけで、どうしてこんなに支持されるのか。もう一つ分からないのはハーマイオニーをはじめ数人が○○にされる場面を直接的に描いていないこと。この映画のSFXなら難なくできると思うが、一様に終わった後の描写しかない。一つには敵の正体を見せたくなかったからなのだろうけれど、描写はどのようにでもできると思う。

同じ閉じた世界を舞台にした冒険ファンタジーでありながら、「クリス・コロンバス。大きく失敗はしてはいないが、大きな成功も収めていないといういつも通りの演出だ。子供向けファンタジーの枠を超えて、大人の観賞にも耐えうる作品にするにはもっと演出の切れ味と話の工夫が必要だろう。闇の魔術の防衛術を教える教師ギルデロイ・ロックハート役のケネス・ブラナーは、映画の中でファンにもてはやされるほどのハンサムにはとても見えないが、そのユーモアは買う。これに対してマギー・スミスやアラン・リックマンは今回、ほとんど演技のしどころがない役回りである。ダンブルドア校長役のリチャード・ハリスは残念なことに先日亡くなった(3作目では誰が演じるのだろう)。遺作はこの映画ではなく、来年、もう1本公開予定作品があるようだ。「ジャガーノート」(1974年)のカッコ良さにしびれた者としては、おじいちゃん役はあまり見たくなかった。

【データ】2002年 アメリカ 2時間41分 配給:ワーナーブラザース映画
監督:クリス・コロンバス 製作総指揮:クリス・コロンバス マーク・ラドクリフ マイケル・バーナサン デヴィッド・バロン 製作:デヴィッド・ヘイマン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーブ・クローブス 撮影:ロジャー・プラット 音楽:ジョン・ウィリアムス 美術:スチュアート・クレイグ 衣装:リンディー・ヘミング
出演:ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン ジョン・クリース ロビー・コルトレーン ウォーウィック・デイビス リチャード・グリフィス リチャード・ハリス アラン・リックマン フィオナ・ジョー マギー・スミス ジュリー・ウォルターズ トム・フェルトン ハリー・メリング デヴィッド・ブラッドリー ケネス・ブラナー 

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