パニック・ルーム
大金持ちが残したニューヨーク中心部の邸宅に引っ越したその日に、3人組の男が隠された遺産を狙って侵入してくる。母(ジョディ・フォスター)と娘(クリステン・スチュワート)が避難用の部屋(パニック・ルーム)に逃れ、男たちを撃退しようとする一夜のサスペンス。ニューヨークのビルの間に浮かぶタイトル文字からクラシックな感じだが、4階建てのこの家の階下から屋根までを自在に動き回るカメラはファイト・クラブ」と同じように凝ったカメラワークが多い。
ただ、結末がどうなるかは分かった話なので、中盤からどうも物足りなくなる。デヴィッド・コープの脚本は犯人側の仲間割れを挟み、力関係が揺れ動く点は面白い。パニック・ルームの構造を知っているフォレスト・ウィテカーを犯人側に置いたことで、母娘は絶対的に不利な状況に陥ることになる(プロパンガスのパニック・ルームへの注入とその反撃方法には疑問。あれでは部屋の方も爆発するだろう)。ウィテカーの役柄なども陰影に富むものにしようとした形跡がうかがえるのだが、まだアイデア、ドラマが足りないと思う。ウィテカーは結局、いつものようなウィテカーの役柄なのである。ジョディ・フォスターが閉所恐怖症であるという設定はあまり生かされないし、娘の糖尿病という設定もその場限りのものに終わっている(これは後から付け加えたのではないか)。そもそもが発展させにくい話で、そこに枝葉を付けただけの脚本では限界があるだろう。
ジョディ・フォスターは基本的に知性派なので、暴力に対抗する場面にはちょっとリアリティがない(フォスターの胸がいつもより大きく見えるのは撮影中に妊娠していたためか?)。ひ弱な人物が反撃に出て、過激な暴力を振るう描写に関して、フィンチャーはサム・ペキンパー「わらの犬」あたりを見習った方がいいだろう。主演女優の降板(ニコール・キッドマン→ジョディ・フォスター)からカメラマンの交代(ダリウス・コンディ→コンラッド・W・ホール)まで撮影中にいろいろとトラブルがあったそうで、そういうことも映画の出来に関係しているのかもしれない。
【データ】2002年 アメリカ 1時間53分 配給:ソニーピクチャーズ・エンタテインメント
監督:デヴィッド・フィンチャー 製作:ギャビン・ボロン ジュディ・ホフランド デヴィッド・コープ シーアン・チャフィン 脚本:デヴィッド・コープ 撮影:コンラッド・W・ホール ダリウス・コンディ プロダクション・デザイン:アーサー・マックス 衣装:マイケル・カプラン 音楽:ハワード・ショア 特殊効果監修:ジョセフ・ビスコシル 視覚効果監修:ケヴィン・トッド・ホーグ
出演:ジョディ・フォスター フォレスト・ウィテカー ドワイト・ヨーカム ジャレッド・レト クリステン・スチュワート パトリック・ボーショー アン・マグナソン イアン・ブキャナン アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー ポール・シュルツ メル・ロドリゲス