It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ビロウ

「ビロウ」パンフレット

潜水艦を舞台にしたホラー、と思ったら、終盤の謎解きは真っ当だった。ミステリ的な展開を予想していなかったので、この真相は面白かった。なるほど、そういうことか。それなら仕方ないよな、という感じである。潜水艦の中で起こる奇怪な出来事(一瞬見える人影や暗闇から聞こえてくる声、壊れた舵)が本当に幽霊の仕業かどうかをあいまいに終わらせるのはこの展開では仕方ないのだが、これによって中盤が少し緩む。話としては十分に完結しているのだから、中盤にもう一工夫欲しいところだった。スターは出ていず、B級感覚の映画で、それなりの出来に仕上がっている。

第2次大戦中、アメリカの潜水艦が3人の漂流者を救助する。3人は病院船に乗っていたが、Uボートの魚雷で船が沈没して漂流していたのだった。3人のうちの1人は女。女性を潜水艦に乗せるのは不吉と言われており、乗組員たちに「悪いことが起きるのでは」と動揺が走る。その予感通り、敵艦の下を潜航中、突然、ベニー・グッドマンのレコードがかかる。敵艦が落とした爆雷で潜水艦のあちこちがきしみ始める場面は潜水艦ものではおなじみの描写だ。誰がレコードをかけたのか。3人のうちの1人がドイツ兵と知った艦長代行のブライス大尉(ブルース・グリーンウッド)はそのドイツ兵を撃ち殺す。それから艦内では不思議なことが起こり始める。

潜水艦自体にも秘密があり、なぜ艦長が死に艦長代行が指揮を取っているのかが話のポイントになってくる。潜水艦の中で幽霊が人を殺しまくるような安易なホラーにしなかった見識は買うが、因縁話の域を出ていないので話の展開に新鮮さがなくなったのは残念。救助された女性を演じるのは「シックス・センス」でブルース・ウィリスの妻を演じたオリビア・ウィリアムス。主人公の少尉はマシュー・デイビス。監督は「ピッチブラック」(2000年、続編が計画されている)のデヴィッド・トゥーヒー。この人はC・L・ムーアの時間テーマSF「ヴィンテージ・シーズン」を映画化した「グランド・ツアー」(1992年)も監督しており、SF的な話の方が得意なのではないかと思う。脚本と製作者の1人にダーレン・アロノフスキーが名を連ねている。

【データ】2002年 アメリカ 1時間45分 配給:ギャガ=ヒューマックス
監督:デヴィッド・トゥーヒー 製作:スー・ベイドン=パウエル ダーレン・アロノフスキー エリック・ワトソン 製作総指揮:ボブ・ウェインスタイン ハーヴェイ・ウェインスタイン アンドリュー・ローナ 脚本:ルーカス・サスマン ダーレン・アロノフスキー デヴィッド・トゥーヒー 撮影:イアン・ウィルソン 美術:チャールズ・リー 音楽:グレーム・レヴェル 視覚効果監修:ピーター・チャン 衣装:エリザベス・ウォラー
出演:マシュー・デイヴィス ブルース・グリーンウッド オリビア・ウィリアムス ホルト・マッキャラニー スコット・フォーリー ザック・ガリフィアナキス ジェイソン・フレミング ジョナサン・ハートマン デクスター・フレッチャー ニック・チンランド

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