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パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち

「パイレーツ・オブ・カリビアン」パンフレット

ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」を基にしていると聞いたのでお子様向けかと思ったら、そうでもなかった。牢屋の鍵をくわえた犬に向かって囚人たちがこっちへ来いと叫んでいる場面や、敵役が骸骨のゾンビたちである点はアトラクション通りで、あとは自由に作ってある。監督のゴア・ヴァービンスキーは「ザ・メキシカン」の汚名はぬぐい去ったようだ。しかし、話に広がりがないし(狭いところで、ごちゃごちゃやっている)、展開がもたもたしているし、2時間23分もつ話でもない。展開が難しくないのはやはりお子様を意識したからだろう。レイティングがPG-13とはいっても、アメリカでヒットしているのはファミリー映画であるからにほかならない。ジョニー・デップが出ていなかったら、映画は悲惨なことになっていたかもしれない。

タイトルが出てきただけで始まるオープニングがかつての海賊映画をなぞった感じである。カリブ海を航行中の英国海軍の船が漂流している少年ウィルを発見する。黒い海賊船に襲われたらしい。総督の娘エリザベスは少年が掛けていた髑髏の図柄入りの金のメダルをとっさに隠す。そして8年後、エリザベス(キーラ・ナイトレイ)は美しく成長し、ウィル(オーランド・ブルーム)は鍛冶屋となっている。総督の就任式に出席したエリザベスはあまりのコルセットのきつさで、城塞の欄干から海に落ちたところを海賊のジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)に助けられる。その夜、黒い海賊船ブラック・パール号が町を襲撃。エリザベスは船長バルボッサ(ジョフリー・ラッシュ)に囚われの身となる。ウィルはジャックの助力を得て、エリザベスを助けるためブラック・パール号を追う。

黒い海賊たちは実は呪いを掛けられて死ぬに死ねないゾンビで、月明かりの下では骸骨に変身する。ILMが担当したVFXは人間から骸骨への変化を実に自然に見せる。デップやブルームと骸骨との戦いもよくできている。しかし、レイ・ハリーハウゼンが「アルゴ探検隊の大冒険」で見せたモデル・アニメーションの骸骨との戦いの方が原初的な感動はあった。動きがカクカクしているにしても、あちらの方が手間がかかっていそうに見えるのである。

話は金のメダルを巡る争奪戦で単純なのはいいのだが、“死の島”で同じような場面を2度繰り返したり、話自体にもあまり新鮮さが感じられない。呪いを解くために海賊たちがメダルを返そうとするのは逆説的で面白い設定だが、もう少し脚本に工夫が欲しいところだった。ジョニー・デップは沈みかけた船で港町にやってくる登場場面からおかしい。会う女に殴られ続けるというのが実にピッタリな感じで、この映画を支えている。清楚に美しく、どこかウィノナ・ライダーを思わせるキーラ・ナイトレイはこれでブレイクすると思える美貌と演技を見せる。オーランド・ブルームは「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラスの方が颯爽とした感じがあるが、この役柄も悪くなかった。

【データ】2003年 アメリカ 2時間23分 配給:ブエナ ビスタ インターナショナル
監督:ゴア・ヴァービンスキー 製作:ジェリー・ブラッカイマー 製作総指揮:マイク・ステンソン チャド・オーメン ブルース・ヘンドリックス ポール・ディーソン ストーリー:テッド・エリオット テリー・ロッシオ スチュワート・ビーティー ジェイ・ウォルパート 脚本:テッド・エリオット テリー・ロッシオ 撮影:ダリウス・ウォルスキー プロダクション・デザイン:ブライアン・モリス 衣装デザイン:ペニー・ローズ 視覚効果スーパーバイザー:ジョン・ノール 音楽:クラウス・バデルト 特殊効果&アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック
出演:ジョニー・デップ ジェフリー・ラッシュ オーランド・ブルーム キーラ・ナイトレイ ジャック・ダヴェンポート ジョナサン・プライス リー・アレンバーグ ケヴィン・R・マクナリー ゾーイ・サルダナ トレヴァ・エチエンヌ デヴィッド・ベイリー アイザック・C・シングルトンJr ギルス・ニュー アンガス・バーネット マイケル・ベリーJr

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