It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

フォーガットン

「フォーガットン」パンフレット

ひとり息子を亡くした母親の周囲から息子の存在の痕跡が次々に消えていくというサスペンス。夫が息子のことを忘れ、写真からも息子の姿が消える。飛行機事故を報じた新聞記事もなくなる。設定は魅力的なのだが、その理由が分かった段階で映画はガタガタと壊れていく。謎の中身をもっと描くべきところなのに、こんなもんでいいだろう的中途半端な解決に終わらせている。予算がなかったか、考える力がなかったかのどちらかだろう。脚本は「シャーキーズ・マシーン」や「メッセージ・イン・ア・ボトル」のジェラルド・ディペゴ。ディペゴの見た悪夢が映画の元になったのだとか。凡才の脚本家が考えると、凡作にしかならない。

テリー(ジュリアン・ムーア)の息子サムは14カ月前の飛行機事故で行方不明となった。それ以来、テリーは精神的に不安定になり、精神科医マンス(ゲイリー・シニーズ)のもとへ通っている。ある日、家族3人で映った写真から息子の姿が消える。夫のジム(アンソニー・エドワーズ)の仕業と逆上したテリーは公園で同じ飛行機事故で娘をなくしたアッシュ(ドミニク・ウェスト)と出会う。アッシュはテリーのことをまったく覚えていず、「自分に娘はいない」と答える。次に息子のアルバムが消え、息子を映したはずのビデオも中身が消えていることが分かる。しかし、ジムは元々何も映っていなかったと告げる。すべてはテリーの妄想なのか。アッシュの家に押しかけたテリーは壁紙の下にアッシュの娘がかいた絵があるのを見つける。娘の記憶を取り戻したアッシュのもとに国家安全保障局の男たちが訪れ、アッシュを連れ去ろうとする。辛くも逃げたアッシュとともにテリーはことの真相を追求していくことになる。

この後、驚くべき真相が明らかになる。と、言いたいところだが、難なく予想はつくレベルの真相である。そしてそれ以上のものはなく、描写の方も極めて中途半端なままに終わる。観客が見たいものを見せてくれないのである。テリーの事件自体は解決するが、全体の解決には何もなっていないのが、ダメなところである。母親だけが息子の記憶をなくさないことについて、監督のジョセフ・ルーベンは母親と子供の絆の深さを象徴させたかったのだという。主人公を特殊な存在にすれば、SF的に発展させていくことはいくらでも可能なのだが、そういう頭はなかったのだろう。ジュリアン・ムーアとゲイリー・シニーズが出ているのでそれなりの体裁はあるが、壊れた映画を救うには至らなかった。

【データ】2004年 アメリカ 1時間32分 配給:UIP映画
監督:ジョセフ・ルーベン 製作総指揮:スティーブ・ニコラス トッド・ゲイナー 製作:ブルース・コーエン ダン・ジンクス ジョー・ロス 脚本:ジェラルド・ディペゴ 撮影:アナスタス・ミコス 音楽:ジェームズ・ホーナー 美術:ビル・グルーム 衣装:シンディ・エヴァンス
出演:ジュリアン・ムーア ドミニク・ウェスト ゲイリー・シニーズ アルフレ・ウッダード ライナス・ローチ ロバート・ウィズダム ジェシカ・ヘクト

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