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プロポーズ

「プロポーズ」

バスター・キートン「セブン・チャンス」(1925年)のリメイク。キートンは後半の追っかけで驚異的な体技を見せてくれたが、この映画の場合、主演がクリス・オドネルだから、体技ができるわけがない。遺産目当てに1000人の花嫁候補が集まるという設定だけを借り、ロマンティック・コメディに仕上げている。設定を借りた部分の出来はあまり良くない。1000人集まっても右往左往するだけで、スペクタクルな見せ場にならないのだ。恐らくゲイリー・シニョール監督、スラップスティックの演出が分かっていない。その代わり、シチュエーション・コメディとしてはまずまずの出来。もう少しロマンティックに脚本を詰めれば良かったと思う。相手役のレニー・ゼルウィガーは「ザ・エージェント」(1996年)の時より魅力が落ちるが、これも監督の演出力の問題だろう。

“You win”(君の勝ちだ)。交際3年目にしてプロポーズしたジミー(クリス・オドネル)はこの言葉でアン(レニー・ゼルウィガー)の反感を買ってしまう。男はマスタング(野生馬)のように自由であらねばならぬ、と考えているジミーにはまだ結婚したくない本心があり、それを見透かされたのだ。プロポーズを断られたところで祖父(ピーター・ユスチノフ)が死ぬ。祖父は1億ドルの遺産をジミーに残した。ただし、「30歳の誕生日の午後6時5分までに結婚すること」との条件があった。指定時間まで27時間しかない。それまでに結婚できなければ、ジミーは遺産を失い、経営する会社の従業員200人も路頭に迷う。ジミーはアンに再アタックするが、またも失言で失敗。しょうがない。ジミーは過去につき合った女性10人すべてに次々にプロポーズ。しかし、ことごとく断られる。親友マルコ(アーティー・ラング)は一計を案じ、新聞広告で花嫁を募集する。それが1面トップの記事になったことから、1000人の花嫁候補者が押し寄せてくる。

1000人の花嫁候補が集まる場面よりもその前のプロポーズを断られ続ける場面が面白い。元恋人の性格はさまざまで、それなりに別れた理由が良く分かるのである。相手役にはマライア・キャリーやブルック・シールズも特別出演している。シールズの役柄はビジネスライクで傲慢な女。こうなると、シールズの大柄さが強調され、ホントに嫌な女に見えてしまう。「エンドレス・ラブ」のころの清純なイメージはかけらもなく、あまりと言えばあまりの怪演なのである。

司祭役で登場するジェームズ・クロムウェル(「ベイブ」「L.A.コンフィデンシャル」「グリーンマイル」)はジミーに本当の結婚の素晴らしさを説き、心変わりさせる重要な役。最近の好調さを裏付けるような演技を見せる。女優陣ではレニー・ゼルウィガーの妹役でちょっとドリュー・バリモア似のメアリー・シェルトンに注目しておこう。

【データ】1999年 アメリカ 1時間42分 ニューライン・シネマ製作 ギャガ・ヒューマックス共同配給
監督:ゲイリー・シニョール 製作:ロイド・セーガン ビング・ハウエンスタイン 製作総指揮:クリス・オドネル マイケル・デ・ルカ ドナ・ラングレイ 共同製作:レオン・デュデヴァー スティーブン・ホロッカー 脚本:スティーブ・コーエン 撮影:サイモン・アーチャー 美術:クレイグ・スターンズ 編集:ロバート・レイターノ 衣装:テリー・ドレスバッグ
出演:クリス・オドネル レニー・ゼルウィガー マライア・キャリー ブルック・シールズ メアリー・シェルトン ハル・ホルブルック ジェームズ・クロムウェル アーティー・ラング エドワード・アスナー ピーター・ユスチノフ キャサリン・タウン レベッカ・クロス ステイシー・エドワーズ サラ・シルバーマン ジェニファー・エスポジット リデル・M・チェーシャー

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