バンディッツ
銀行強盗の場面から回想で始まるのが「パール・ハーバー」)と同じく、時々すごい美人に見えることがある。キッチンで「ヒーロー」を歌いながら料理する初登場の場面から演技力を感じさせ、けっこうスタイルもいいのだなと見直した。ビリー・ボブ・ソーントンは相変わらず変な役だが、おかしくてうまい。ブルース・ウィリスはそれなりか。主演3人に関しては脚本・演出よりもレベルが高く、作家の映画というよりスターの映画となっている。
オレゴン州立刑務所からジョー・ブレーク(ブルース・ウィリス)とテリー・コリンズ(ビリー・ボブ・ソーントン)がミキサー車を奪い、衝動的に脱獄する。タフガイのジョーに対してテリーは病気恐怖症を持つ気弱な男。2人はメキシコでホテル経営を夢見て銀行強盗を計画する。テリーが考えたのが、銀行支店長の家に前日から泊まり込み、朝早く支店長に金庫を開けさせて金を奪う計画。スタントマン志望のハーヴィー(トロイ・ガリティ)に助手を務めさせ、最初の計画はうまくいく。金を山分けして2週間後に落ち合うことにしたが、テリーがふとしたきっかけで満たされない主婦のケイト(ケイト・ブランシェット)と出会う。隠れ家に一緒にやってきたケイトはジョーと愛し合うようになるが、やがてテリーも愛してしまう。このケイトとジョー、テリーの三角関係が後半の焦点となる。
同じ手口で次々に銀行強盗を成功させ、“お泊まり強盗”(Sleep Over Bandits)として有名になる、というところを見ても、軽妙に作りたい映画なのだが、バリー・レビンソンの演出はどうも弾んでいかない。ケイトが仕事中心の夫にうんざりしていたり、三角関係のちょっとシリアスな描写も悪くないのだが、そういう場面とユーモアがなかなか結びつかない。もう少し全体にハッピーな感覚があると良かったと思う。シリアスとユーモアのバランスが悪く感じるし、細部のギャグがあまり効果を挙げていない。バリー・レビンソン、映画のまとめ方を間違ったようだ。
映画の中でジョーとテリーは現代の“ボニーとクライド”(「俺たちに明日はない」)としてマスコミに報道される。それよりも僕が思い出したのはブッチ・キャシディとサンダンス・キッド、つまりジョージ・ロイ・ヒル「明日に向って撃て!」。外国での成功を夢見る2人と三角関係が絡むところが似ている。もちろん、「明日に向って撃て!」ほどの完成度があるわけではない。銀行強盗の決着の付け方などは安易で、そんなにうまくいくかよ、と思えてしまう。余計な描写も多く、ハーヴィーとピンクのブーツの女とのエピソードなど不要だろう。
【データ】2001年 アメリカ 2時間4分 配給:20世紀フォックス
監督:バリー・レビンソン 製作:マイケル・バーンバウム ミシェル・バーク バリー・レビンソン 脚本:ハーレイ・ペイトン 撮影:ダンテ・スピノッティ 衣装デザイン:グロリア・グレシャム 音楽:クリストファー・ヤング
出演:ブルース・ウィリス ビリー・ボブ・ソーントン ケイト・ブランシェット トロイ・ガリティー ブライアン・F・オバーン ステイシー・トラビス ボビー・スレイトン