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パーフェクト・ストーム

「パーフェクト・ストーム」

史上最大のハリケーンに遭遇した漁船の運命を描くスペクタクル。マサチューセッツ州グロスターの漁師たちを描く前半と漁船が嵐に巻き込まれる後半にはっきり分かれる構成で、困ったことにどちらも演出の手際が悪い。肝心のハリケーンの描写まで1時間余り。その後延々と続くハリケーンに迫力はあるのだが、大波や風雨にもまれる漁船を描くだけなので、あまりにも単調で飽きてくる。申し訳程度にヨットの乗客を救出する沿岸警備隊の様子などが挟まれるけれど、漁船の乗組員を描きたかったのか、ハリケーンを描きたかったのか、どっちつかずになった感がある。ハリケーンを描くとすれば、もっと広い視点が必要だっただろう。実話に基づいたことが物語のスケールを狭めてしまったようだ。しかも実話と言いながら、漁船の乗組員は全員死んでしまっており、目撃証人はいない。後半の描写はすべてフィクションということになる。ウォルフガング・ペーターゼン、いったい何をやっているのか。

定点観測という手法ももちろんありだ。しかし、その場合はドラマに比重を置き、ドラマだけで面白く作る必要がある。この映画の場合、そこまでいっていないのがつらい。1991年10月、グロスター。漁船「アンドレア・ゲイル号」がメカジキ漁から帰るが、今回も不漁だった。船長ビリー(ジョージ・クルーニー)は2日後に再び出港しようと、乗組員に提案する。乗組員は恋人クリスティーナ(ダイアン・レイン)との結婚を控えるボビー(マーク・ウォールバーグ)、家庭を顧みずに離婚したデイル(ジョン・C・ライリー)ら5人。前半で描かれるのは乗組員や町の人間模様なのだが、ありきたりの描写であり、あまり興味を引かない。後半への伏線などもまったくない。第一、ハリケーンの接近は分かっていたはずで、それに何ら言及しないのはおかしいのではないか。

ゲイル号はいつもの漁場であるグランド・バンクスでは水揚げが少なく、遠いフレミッシュ・キャップまで足を伸ばす。予想通りここでは大漁に恵まれる。しかし、帰途には3つのハリケーンが迫っていた。3つは互いに融合し、史上最大の勢力となる。漁船の製氷機が壊れたゲイル号はハリケーンを避ければ、せっかくの大漁をドブに捨てることになる。ビリーたちはハリケーンの中を突っ切ることを決意する。古い漁船にとってそれはあまりにも無謀なかけだった。

パンフレットによると、このハリケーンには日本の漁船も巻き込まれたが、無事生還したという。こうした事実も織り込み、ハリケーンの影響を広く描いていたなら、もう少し面白い映画になったのではないか。CG350カットというSFXはそれなりに見応えがある。かつては水を使ったSFXは難しいといわれたのだが、難なくそれをクリアしている。問題はそうしたSFXと物語がうまく相乗効果を上げていない点にある。これは実話だからつまらないというのではなく、単に脚本と演出の問題である。ジョージ・クルーニーとマーク・ウォールバーグは「スリー・キングス」に続いて共演。あの映画の新しさ、破天荒さに比べると、「パーフェクト・ストーム」の作りの当たり前さ、古さが余計に目立つ。

【データ】2000年 アメリカ 2時間10分 配給:ワーナー・ブラザース
監督:ウォルフガング・ペーターゼン 製作:ポーラ・ワインスタイン ウォルフガング・ペーターゼン ゲイル・カッツ 製作総指揮:バリー・レビンソン ダンカン・ヘンダーソン 原作:セバスチャン・ユンガー 脚本:ビル・ウィットリフ 撮影:ジョン・シール 美術:ウィリアム・サンデル 音楽:ジェームズ・ホーナー 衣装:リチャード・フランシス・ブルース 視覚効果監修:ステファン・ファンフマイアー 特殊効果監修:ジョン・フレイジャー
出演:ジョージ・クルーニー マーク・ウォールバーグ ジョン・C・ライリー ダイアン・レイン ウィリアム・フィッチナー ジョン・ホークス アレン・ペイン メアリー・エリザベス・マストラントニオ カレン・アレン チェリー・ジョーンズ ボブ・ガントン クリストファー・マクドナルド マイケル・アイアンサイド ラスティー・シュイマー ジャネット・ライト ダシュ・ミホク ジョシュ・ホプキンズ

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