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シネマ1987online

ハムナプトラ 失われた砂漠の都

1932年のアメリカ映画「ミイラ再生」のリメイク。といっても見ていないし、映画会社もそのことにこだわってはいないようなので、知らなくても別にかまわない。双葉十三郎さんの「ぼくの採点評 戦前篇」によると、ボリス・カーロフ主演、カール・フロイント監督で、「出来ばえは怪奇ものの水準作というにとどまる」らしい。基本的なストーリーは同じようだが、67年前の作品だからSFXは比べようもないだろう。

今回の映画は邦題からして「レイダース 失われたアーク」のセンを狙っているようだけど、魔物が愛する人をよみがえらせるために美女を狙うというプロットから、僕はなんとなくジョン・カーペンターの「ゴースト・ハンターズ」を思い出した。ノリが軽いことも共通しているが、面白さは「ゴースト・ハンターズ」の方が上である。

紀元前のエジプトで、王の愛人を愛するようになったために、高僧イムホテップ(アーノルド・ボスルー)は生きたままミイラにされる。愛人は自ら命を絶ち、イムホテップは怨念を抱えながら、石棺の中に横たわる。3000年後の1920年代、博物館の司書エヴリン(レイチェル・ワイズ)は幻の都ハムナプトラを探し求め、兄ジョナサン(ジョン・ハナ)と元傭兵リック(ブレンダン・フレイザー)とともに砂漠に向かう。リックは数年前、偶然ハムナプトラの場所を知ったのだ。これに財宝を狙うアメリカ人のならず者たちと、ハムナプトラを守る秘密結社が絡んでくる。

ハムナプトラに着いたならず者たちは墓所から、死者を蘇らせる呪文を記した「死者の書」を発掘。エヴリンたちは石棺のミイラ、つまりイムホテップを発見する。イムホテップは、エヴリンが不用意に死者の書を読んだことで復活してしまう。強大な魔力を持つイムホテップは腐った体を元に戻すためにならず者たちを襲い、さらに愛人を蘇らせようと、エヴリンを狙う…。

大仰なナレーションから始まって、ユーモアを交えながら映画は進行するが、どうも演出が緩い。監督のスティーブン・ソマーズはこれが4作目。昨年、「ザ・グリード」が一部SFファンの間で話題になったが、まだB級から抜け切れていないようだ。冒頭の古代エジプトを再現した場面をはじめSFXは多く、まずまず充実もしているけれど、こちらがこの程度では驚かなくなっていますからね。スペクタクルなシーンにも今ひとつ迫力が伴っていない。

最大の欠点は主役の2人、フレイザーとワイズが魅力に欠けること。ワイズは最初に眼鏡をかけて登場するという、こうした冒険もののヒロインの常套的キャラを踏襲している。しかし、この人の場合、眼鏡をはずしても驚くような美人にはならないのね。「ロマンシング・ストーン 秘宝の谷」のキャスリーン・ターナーとは大違いである。「頭は弱いが勇気だけはある」フレイザーも8000万ドルの大作(普通?)映画を引っ張る風格はなかった。

「ハムナプトラ」という、内容を想像しにくいうえにカッコ悪い邦題もマイナス。もう少し何とかならなかったのでしょうかね。

【データ】1998年アメリカ映画 2時間5分 UIP配給
監督・脚本 スティーブン・ソマーズ 原案:スティーブン・ソマーズ ロイド・フォンビール ケヴィン・ジャール 撮影:エイドリアン・ビドル 音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演:ブレンダン・フレイザー レイチェル・ワイズ ジョン・ハナ  ケヴィン・J・オコナー アーノルド・ボスルー

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