It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ホームアローン

監督のジョン・ヒューズらしさが色濃いクリスマスストーリーだ。真夏にクリスマスの映画を見るのは、興醒めの部分もあるが、映画自体はヒューズ独特のスラップスティックからぺーソスヘの転換がうまく、まずまずの作品に仕上がっている。しかし、これが「E.T.」「スター・ウォーズ」に次いで史上3位のヒットを記録したとは意外な感じがしないでもない。

フランス旅行に行く家族から置き忘れられた少年ケヴィン(マコーレー・カルキン)が泥棒2人組を撃退するというストーリーに家族の絆がしっかりと絡めてある。「家族なんか消えてしまえ」と思っていたケヴィンだが、“快適な独り暮らし"を続けているうちに、やはり家族の大切さが分かってくるという極めてまともな話の展開なのである。アホな監督が撮ったら、どうしようもなくつまらない映画になっていたのかもしれないが、ヒューズとコロンバスのコンビは映画の中に引用するフランク・キャプラの映画のように心温まる話に仕立てた。“シャベル殺人鬼"との噂が立っている隣の家の老人が、実は息子と不和が続いている孤独な老人だと分かる場面−ケヴィンと教会で語り合う場面−がそのテーマを浮き彫りにしており、「ダイ・ハード」並みの活躍をした後の大団円にうまくつながっていく。だからこそ、これはクリスマス・シーズンにふさわしい。家族で見に行った後、家でしみじみと「家族っていいなあ」などと思うに、ふさわしいファミリー・ムービーなのだろう。

ヒューズ監督の「大災難P・T・A」を見た時に不満だったのは、出だしの傑作なブラック・コメディが終盤ぺーソスに転化してしまうことだった。スティーブ・マーティンが疫病神のジョン・キャンディと旅をともにすることになり、さんざんな目に遭わされる。かといって決してキャンディに悪気があるのではなく、要するに不器用な人間なだけなのである。映画は終盤、その不器用さにマーティンが友情を感じ始めて一挙にしみじみの世界へと入っていくのだ。キャンディ主演の傑作「おじさんに気をつけろ!」(マコーレー・カルキンも出ている)も同じ展開であって、これを見て僕はヒューズの本質はしみじみの方にあると確信した。

ヒューズには「プリテイ・イン・ピンク」や「フェリスはある朝突然に」などティーンエイジャー向けの傑作もあるが、「大災難…」と「おじさん…」の2作を見ると、「ホーム・アローン」が集大成でも何でもなく、単なる延長線上にある作品であることがよく分かる。マコーレー少年とスーパーのレジ係との応酬は(役割は反対だが)「おじさんに気をつけろ!」でキャンディを質問攻めにする場面と同じだし、泥棒を撃退するのに使う残酷とも言える罠の数々は「大災難」のブラックな味わいと共通する。このブラックさはユーモア雑誌「ナショナル・ランプーン」出身であることが一因なのだろう。ちなみにジョン・キャンディはランプーンの映画「ホリデーロード4000キロ」(ヒューズ脚本で監督は何とハロルド・レイミスだ)に今回と同じようなチョイ役で出ていた。

ヒューズの方にばかり話が行ってしまったけれど、監督のコロンバスの手腕も侮れない。ヒューズ監督の諸作に引けを取らない演出だと思う。音楽のジョン・ウィリアムスも大作映画の時とは違って、小粒な作品によく合わせた好スコアを書いている。早々に製作が決まった続編も、このスタッフならまず間違いないのではあるまいか。(1991年8月号)

【データ】1990年 アメリカ 1時間43分
監督:クリス・コロンバス 製作総指揮:マーク・レヴィンソン スコット・M・ローゼンフェルト 製作・脚本:ジョン・ヒューズ 撮影:ジュリオ・マカット 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マコーレー・カルキン ジョー・ペシ ダニエル・スターン ジョン・ハード キャサリン・オハラ アンジェラ・ゴーサルズ

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