プレデター2
シュワルツェネッガーのアクションとエイリアンを組み合わせた前作「プレデター」がキワモノ的な発想の産物であることは間違いないだろう。マクテイアナンの腕をもってしても凡作の域を出てはいなかった。それなのに、全米で1987年第7位の興業成績を挙げて(あれがヒットしたとは信じられないが)、当然のように続編が登場した。今回は舞台をジャングルからロサンゼルスに持ってきた。プレデターと戦うのはシュワルツェネッガーに代わって、「リーサル・ウェポン」のダニー・グローバー。しかし、というかやっぱリ面白くはならなかった。
前作から10年後。ロサンゼルスはコロンビア系とブードゥー教系の麻薬組織の間で抗争が続いていた。映画はいきなリ麻薬組織と警察との銃撃戦で幕を開ける。大量の銃火器で攻撃する組織に警察はたじたじ。だが、ビルに立てこもった組織のチンピラを何者かが全員虐殺した。続いてブードゥー系の組織も襲われ、さらに同僚の刑事が殺されるに及んでダニー・グローバー刑事は虐殺者の謎を深り始める。なぜかDEA(連邦麻薬取締局=字幕スーパーではFBIと出る)もこの犯人を追っており、グローバーの捜査を妨害する。もちろん虐殺者の正体はプレデター。30分以上もあるクライマックスにはDEAとグローバー対プレデターのアクションが展開されることになる。
監督のスティーブン・ホプキンスは、この前に「エルム街の悪夢5 ドリーム・チャイルド」を撮っている。レニー・ハーリンぐらいの演出は見せるかと、かすかな期待を持っていたが、まったく駄目であった。アクションで話をつなぐのは良いのだが、それぞれのシーンに工夫が感じられず、極めて単調な展開になってしまっている。第一、画面が暗い。中盤にある地下鉄を襲うプレデターの場面など、暗すぎて何をやっているのか分からない。クライマックスの冷凍庫のシーンも同様だ。赤外線しか感知できないプレデターの弱点をついてDEAは断熱服を着込み、液体窒素で生け捕りにしようとするが、このために冷凍庫の中が暗くなっている。これではアクションの効果が半減してしまう。
例えば、「エイリアン」の第1作はホラーの色彩が強かったから、姿をはっきり見せないことにはそれなりの効果があった。戦争アクション映画となった「エイリアン2」ではエイリアンの軍団をこれでもかこれでもかと見せてくれたではないか。プレデターは姿を透明にできるという特技を持つが、観客にはもう分かっているのだから、さっさと正体を現せぱよいのである。正体があんな不格好な奴なので、隠さざるを得なかったのだろうと邪推したくなる。ま、前作より少しはましになっている気はするが…。 面白いのはプレデターが戦闘のある所に必ず現れるという点だ。DEAの捜査官(ゲイリー・ビジー)は、「硫黄島にもカンボジアにも奴は来た」とグローバー刑事に話す。つまり、プレデターは戦闘する人間と戦うことを主目的にしているわけで、人間の肉を喰うことが目的ではなかったのだ。だからプレデターが狙うのは麻薬組織とか警察の人間であり、一般市民は巻き添えになることはあってもそれほど危険はないのである。狂暴なだけの宇宙人かと思ったら、けっこう理性を備えているわけだ。しかし、これはちょっとね。むしろ無差別に攻撃してくれた方が、プレデターの怖さは出たと思う。理解できる奴は怖くないのである。SF的に感心した部分はまったくなく、B級のストーリーをB級の監督が映画化した凡作で、しかも前作を下回る出来だった。(1991年3月号)