ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ
テレビシリーズは一切見ていない。見ていなくても分かる作りになっていて、そこには好感を持った。テレビシリーズの最終回を映画でやるというのは最初からテレビの視聴者だけを相手にした映画になりがちだけれど、それを避けたのは賢明だった。
なぜテレビを見ていなくても分かるのかと言えば、映画で描かれる決勝戦(ファイナルステージ)は独立したゲームだからだ。ゲームの参加者11人が3色のリンゴを投票するだけの「エデンの園」と呼ばれるこのゲームは、単純だがよく考えてあって、ツイストの連続。ゲームが1回終わるたびに意外な結果が現れ、登場人物がその種明かしをするという構成になっている。脚本は20稿に及んだそうだ。穴を防ぎ、つじつまを合わせるために脚本家の2人(黒岩勉、岡田道尚)は相当考えたに違いない。
この脚本の練り方は評価に値する。ただし、、どうも見ていて小粒だなという印象になってくる。ゲームのような犯人捜しだけの本格ミステリは欧米ではとっくに廃れ、もっと現実に近づいたミステリがほとんどだ。ツイストにツイストを重ね、高い評価を受けているのはジェフリー・ディーヴァーぐらいか。この映画の場合、ゲームそのものが主体なので、そうした批判は当たらないし、騙し合いのゲームの中で人を信じるというテーマも備えているのだけれども、やっぱり物足りない思いは見ていて消しようがない。ゲームの中の心理戦に過ぎず、小さなところでごちゃごちゃやってる印象になってしまうのである。見ていてこういう練った脚本の在り方をゲームの外に持ち出して欲しいと思えてくる。実社会を舞台にしたゲームになれば、金子修介「デスノート」のように面白い映画になっていたかもしれないなと思う。
セミファイナルでゲームを降りた神崎直(戸田恵理香)にファイナルステージの招待状が来る。1人が棄権したために直に出番が回ってきたのだ。直は天才詐欺師・秋山(松田翔太)の足手まといになりたくなかったが、今回のゲームは人を信じることが要求されると聞き、秋山を助けるためにゲームに参加することになる。参加者は11人。ゲーム「エデンの園」は金、銀、赤の3色のリンゴを投票し、最も数が多かった色のリンゴに投票した者には1億円が支払われる。全員が赤を選べば、全員が1億円を受け取ることになり、敗者はいなくなるが、ゲームに勝って賞金50億円を目指す参加者たちは1回目から裏切りに裏切りを重ねていく。
舞台の孤島をもっと話に絡めて欲しいとか、悪役側をもう少し描けよ、とかいろいろ不満はある。しかし参加者11人にそれぞれスポットを当てながらもキャラクターがやや類型的になり、厚みを欠いていることが水準作ではあるけれどもそれ以上の作品にはならなかった一番の理由ではないかと思う。
監督は映画初演出の松山博明。戸田恵理香はバカ正直な主人公にぴったり。松田翔太も雰囲気が良い。映画に登場するゲームの進行役ケルビムは「SAW」のジグソウに影響を受けているのは明らかだろう。映画全体の作りも影響を受けていると思う。