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シネマ1987online

リターナー

「リターナー」パンフレット

「ジュブナイル」で本格的なVFXを見せた山崎貴監督の第2作。前作で感じた不満を一掃させるSFアクションに仕上がった。タイムトラベルとエイリアンの侵略と戦争をミックスしながら、ドラマの重点はあくまでも2002年現在の中国系マフィアとの戦いに絞ったのが良い。「ジュブナイル」で正統派の清楚な美少女という感じだった鈴木杏は今回、勝ち気で活発な少女を演じており、「後は任せたぞ!相棒」と叫ぶ場面は主人公ミヤモト(金城武)の苦渋の過去(「隠れてろ!相棒」)と重なることで、主人公の思いが噴出した名場面となっている。主人公にアクションが様になっている金城武を持ってきたのは懸命なキャスティングで、前作での大きな不満は鈴木杏の相手役の少年たちの演技の拙さにあったのだから、金城武の起用がまず成功の要因だろう。鈴木杏と金城武のコンビはおかしくて切なくて、いい味を出しており、ぜひぜひこのコンビで続編を作ってほしいと思う。

何かの予告編か、と思えるようなタイトル前の慌ただしい未来の描写から、映画は2002年10月19日の現在に舞台を移す。船上。中国系の人身売買マフィアが子どもをコンテナに閉じこめている。泣き叫ぶ子どもに向かって、組織の幹部で金髪のミゾグチ(岸谷五朗)が銃を放ち、血しぶきが飛び散る。そこへ主人公のリターナー、ミヤモトが登場。ミヤモトは裏社会の取引から金を奪還する仕事をしている。ミゾグチを見たミヤモトはミゾグチが10数年前、友人をさらって内臓を売買した男であると知る。ミヤモトは大陸のマンホールで暮らしていたが、友人を殺された復讐を果たすため、ミゾグチを追って日本に来ていた。ミヤモトはミゾグチを追い詰めるが、突然現れた少女を撃ってしまい、ミゾグチを取り逃がす。

薄汚い格好をした少女はミリと名乗り、ミヤモトの首に爆弾を仕掛けて無理矢理、自分の任務に協力させる。少女は2084年から来た、と話す。その時代、地球はエイリアンに侵略されて、人類はチベットの山奥で細々と抵抗を続けている。しかしそこにもエイリアンの手が伸びる。ミリはぎりぎりのことろで、2002年に逃れてきたのだった。ミヤモトはミリの話を信じないが、爆弾には逆らえず、渋々協力することになる。ミリの目的は地球にやってきた最初のエイリアンを抹殺し、未来を変えることだった。

今回もまた監督、脚本、VFXを担当した山崎貴はSFをよく分かっているな、と思う。設定にも展開にも不備な点は見当たらず、安心して見ていられる。「マトリックス」のように銃弾の軌跡を避けるシーンがあったり、エイリアンの造型が「エイリアン」に似ていたり、未来社会の戦争に勝利するために過去を変えようとする設定自体が「ターミネーター」を思わせたりするのだが(ついでに言えば、ミリが未来から持ってきたソニックムーバーという武器は「サイボーグ009」の加速装置がヒントではないかと思う)、そんなことがまったく気にならないほど映画は充実している。VFXの充実もいいが、役者の演技とドラマの展開がひたすら良く、主演2人のドラマが極めてエモーショナルだ。これが一番重要で、日本映画ではあまり成功していないSF映画の作り手として山崎貴は着実に進歩しており、注目し続けたいと思う。

【データ】2002年 1時間56分 配給:東宝
監督:山崎貴 プロデューサー:宅間秋史 堀部徹 安藤親広 脚本:山崎貴 平田研也 音楽:松本晃彦 撮影:柴崎幸三 佐光朗 美術:上條安里 VFXプロダクション:白組 制作プロダクション:ROBOT
出演:金城武 鈴木杏 岡本夕起子 村田充 飯田基祐 清水一哉 河合千春 ディーン・ハミントン 趙暁群 高橋昌也 樹木希林 岸谷五朗

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