ワンピース The Movie デッドエンドの冒険
ゴム人間のルフィとその仲間たちの活躍を描く海賊アニメの映画版第4作。初の単独公開(航海)が売りだが、昨年春まで併映だった「デジモン」の興行力が落ちた(昨年夏に惨敗した)ので、単独公開せざるを得なかったのだろう。余計な併映がなくなって上映時間はこれまでの70分程度から20分ほど長くなったものの、出来そのものは変わらない。毎回同じパターンの話なので、印象も変わらない。ルフィたちが海軍に追われる冒頭の演出にさえがなく、次に意味のない一人称の視点で港町の移動シーンがあって、これはちょっとと思ったら、その通りの出来だった。サンジやゾロに活躍の場面がないとか、シーンによって絵の出来不出来に差が大きいとか、細かい不満はいろいろあるのだが、何よりも話がもっと面白くないと苦しい。
万年金欠病のルフィたちが賞金3億デリーの海賊船レース・デッドエンドに参加することになる。優勝候補のガスパーデは悪魔の実の能力者。アメアメの実を食べて、体が「ターミネーター2」のT1000のように変わっている。港町ハンナバルでルフィたちと知り合った賞金稼ぎのシュライヤ・バスクードはこのガスパーデを狙っていた。シュライヤは8年前、妹をガスパーデに殺された恨みから海賊を狙う凄腕の賞金稼ぎになった。ガスパーデの船には病気に苦しむボイラー職人のビエラじいさんがおり、ビエラに育てられた少年アナグマは薬を買う金を手に入れるため、ルフィの船に潜入するが、ゾロに発見される。
映画はテレビシリーズの番外編みたいなものだから、毎回、悪人に苦しめられている者たちをルフィが救う展開にせざるを得ないのだが、今回もシュライヤとアナグマの話が中心になる。ゾロに見つかったアナグマが生きていても意味がないから自分を殺せ、と言ったことにナミが激怒したり、ルフィが終盤、「どんなことがあっても生き抜け」みたいなセリフを吐くのが義理と人情と友情と正義と不正に対する強い怒りに彩られた「ワンピース」らしいところ。ギャグを交えて本音を語るのが根強い人気の要因か。
監督はテレビシリーズを担当している宇田鋼之介。テレビシリーズで魚人のアーロンたちにメタメタにやられた(そして驚異的な意志の力で反撃した)エピソードのような話を映画にも期待したいところだ。上映時間が長くなったのにあまり盛り上がらないのはルフィたちに危機らしい危機がないためではないかと思う。やられてやられてやられた後に反撃する展開はこういう話の定石なのだ。テレビとの同時進行で時間的な制約があるのは分かるが、次の作品ではもっと面白い話を見せてほしい。テレビより面白くないのでは映画館に行く意味がない。
【データ】2003年 1時間30分 配給:東映
監督:宇田鋼之介 企画:清水慎治 原作:尾田栄一郎 脚本:菅良幸 音楽:田中公平 浜口史郎 キャラクターデザイン・作画監督:小泉昇 美術監督:吉池隆司 佐南友理 主題歌:BUMP OF CHICKEN「sailing day」
声の出演:田中真弓 中井和哉 岡村朋美 山口勝平 平田広明 大谷育江 山口由里子 池田秀一 宮本充 永井一郎 石田太郎 酒井美紀