渇き。
ロドリゲス&タランティーノの「グラインドハウス」のようなタイトル、「オールド・ボーイ」のような残虐性。殴られ蹴られ刺され撃たれる主人公(役所広司)の姿は肉体ばかりでなく、精神的にも壊れてきてかなり痛々しい。
中島哲也監督の編集はいつものようにアップテンポで、3年前と現在を自在に描きながら、失踪した娘加奈子(小松菜奈)の実相と事件の真相を徐々に明らかにしていく。あまりのバイオレンス描写に思わず笑ってしまう場面もあるけれど、見終わって気分が晴れないのは「オールド・ボーイ」のような驚愕の真実があるわけではなく(こちらの想像の範囲を超えない)、刑事から落ちぶれてやさぐれた主人公の精神が病んでいるからだろう。
というか、登場人物のほとんどがビョーキだ。異常な人物ばかり出てきて、感情移入できるキャラが見当たらない。叫び、喚き、傷つけ合い、殺し合う人間たちを見ていると、こちらの神経もささくれ立ってくる。この異様な世界の中では加奈子の実は真っ当な(そして単純な)動機の方にむしろ違和感が出てくる。
救いのない話であることはかまわないが、カタルシスがないのは困ったもので、事件の真相が明らかになっても、主人公にとっては少しも終わらない話になっている。無間地獄のようなラスト。中島哲也の語り口はやや一本調子のきらいがあることを除けば今回も一流だと思う。それをもってしてもこの話では傑作になることは難しかったようだ。描写の過激さに比べてストーリーが弱い。