劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕
アメリカでも人気という「ポケットモンスター」の劇場版第2作。アニメーション監修に小田部羊一の名前があるので、「もしかしたら」というかすかな期待はあったのだが、間違いだった。CGを取り入れた作画はまあ水準に達しているけれど、とにかく脚本が弱すぎる。昨年の「ミュウツーの逆襲」から少しも進歩していない。こんなレベルではそれこそ子供だましといわれても仕方がないだろう。同じテレビシリーズでありながら、テレビとはかけ離れたSF冒険活劇に徹している「クレヨンしんちゃん」あたりを少しは見習って欲しいものだ。
謎のコレクター“ジラルダン”がオレンジ諸島にいる火の神といわれるポケモン、ファイヤーをゲットする。ジラルダンはほかに雷の神サンダーと氷の神フリーザーを狙う。この3匹は自然界を司っており、捕らわれたことで自然のバランスが崩れ、世界は天変地異に見まわれる。嵐に巻き込まれて偶然、オレンジ諸島にたどり着いたサトシとピカチュウは3匹を救うが、怒った3匹は壮絶なバトルを始めてしまう。そこに深海から、幻のポケモン、「海の神」ルギアが現れる。ルギアは自然界のバランスを取り戻そうと、3匹に戦いを挑む。
物語の設定自体は悪くない。脚本の詰めが甘いのである。謎のコレクターとはホントに謎のままで、なんの説明もありゃしない。よくいる典型的な悪役というだけである。3匹に敗れたルギアがすぐに復活するのも面白くない。地球の危機と大仰に構えながら、その実中身は限りなくありきたりで薄い。総じてオリジナリティーに乏しいし、ドラマ性も希薄だ。子供向けだから、筋を単純化したいのは分かるが、子どもはけっこう映画の善し悪しを見抜くものだ。甘く考えていると、ポケモンブームも怪しいと思う。
冒頭、ジラルダンが操る飛行宮(というらしい)が出たときにはなかなかいいCGだと思ったのだけれど、ただそれだけのこと。CGはこのほか、ポケモンの大群の場面や深海の描写に使われている。パンフレットによると、「動画枚数は昨年の2倍、CGは10倍」なのだそうだ。それだけ力をいれているのに、この脚本ではどうしようもない。映画は1にも2にも筋、という当たり前のことを改めて思い出させてくれる映画である。
同時上映の「ピカチュウたんけんたい」は、昨年の「ピカチュウの夏休み」に続いてさとう珠緒ちゃんがナレーションやってますが、完全なおまけですね。でも小さな子どもはこちらの方が喜ぶかもしれません。
【データ】1999年 東宝 1時間21分
監督:湯山邦彦 原案:田尻智 脚本:首藤剛志 アニメーション監修 小田部羊一
声の出演 松本梨香 大谷育江 石塚運昇 山寺宏一 鹿賀丈史 浜田雅功