It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

鴨川ホルモー

少なくとも、パパイヤ鈴木が振り付けたというおかしなポーズに合わせて「ゲロンチョリー!」「ピッキピー!」と真剣に叫ぶ栗山千明と、冴えない京大生をコミカルにリアルに演じる山田孝之に関して言えば、僕は十分に満足した。原作者の万城目学(まきめまなぶ)によれば、「これは傍目から見ればどうでもいいサークル活動に、とめどなく貴重な時間をつぎ込む大学生たちの話」。この言葉は観客から見ればバカバカしい設定と展開に真面目に取り組む出演者たちの姿がそのまま重なる。

映画としては少し弾け方が足りず、奇想天外な祭りホルモーの描写にもう少し大学生たちの心情を重ねてほしかったという思いが残る。そこがやっぱり同じようにバカバカしいことに取り組む大学生たちを描いたスラップスティック「サマータイムマシン・ブルース」には及ばなかった点だろう。原作ではあまり描かれないオニ(式神)たちのかわいらしい造型や動きのCGは大変よくできている。GONZOとシネグリーオが担当したVFXが素晴らしいだけに、青春小説として完結している原作の意図とは異なるにしても、オニたちの戦いを中心に据えた熱血青春映画にしても良かったのではないかと思う。

監督は「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」「犬と私の10の約束」の本木克英。原作を半分ほど読んで映画を見た。僕が読んだところまでは、映画は原作に忠実だった。原作で笑ったレナウン娘の場面(吉田代替わりの儀の場面)はそのまま映像化されている。映画を見た後に最後まで読んだが、大筋は同じである。違うのは細部で、例えば、楠木ふみ(栗山千明)が十七条ホルモーにおいて初めて戦略の才能を発揮する場面がない。逆に京都上空に大きな黒いオニが出現するのは映画のオリジナルだ。映画は原作のストーリーに沿いながら、細かいオフビートなギャグを入れている。そうしたギャグも悪くないのだが、ドタバタ度とオーソドックス度がやや足りないのだ。何よりドラマの盛り上げ方とテンポが不十分で、良い題材なのに惜しいと思う。

出演者の中では京大青竜会499代目会長の荒川良々は少し原作とイメージが違うが、高村役の濱田岳は原作以上のおかしさ。キャラが立っている。龍谷大フェニックス会長の佐藤めぐみも出番は少ないが、きりっとした感じで良かった。

それにしても、クライマックスに頻出するゲロンチョリー(「つぶせ」の意味)をはじめ、原作にはないオニ語をたくさん考えたスタッフは偉いと思う。映画が大ヒットすれば、流行語大賞を取ってもおかしくない。それぐらいのインパクトがあった。

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