仮面ライダーアギト PROJECT G4
テレビには登場しない特殊強化装甲服G4をフィーチャーした番外編とでもいうべき内容。G4はG3-Xの次の世代に当たるパワードスーツだが、装着員の死を招くため研究が途中で放棄された。それを自衛隊が盗み出して完成させる。G4を装着するのはかつてアンノウンに為すすべもなく敗れた自衛隊員で、自分の死も厭わない覚悟ができている。G4を中心に人を超えた存在の悲哀を描けば、映画はもっと面白くなっていたと思う。しかし、その描き方が決定的に足りない。良くも悪くもテレビシリーズと同一線上にある内容である。いや、一話完結ではない長いストーリーが綴られるテレビシリーズは十分面白いらしいが、「仮面ライダー」のタイトルを背負う以上、主人公のアギトもG3-Xもギルスも描く必要があるわけで、そうなると上映時間1時間10分では少し苦しくなるのである。演出的に見ても映画として優れた部分は見当たらず、ダメではないが、良くもないという典型。表面的なプロットをなぞっただけで終わってしまった。
無数のアンノウンが超能力研究所を襲う。超能力を持つ沙綾香とレイは難を逃れるが、離ればなれになってしまう。数週間後、警視庁G3ユニットの小沢澄子(藤田瞳子)のもとに自衛隊から深海理沙(小沢真珠)が派遣される。理沙の狙いは澄子が開発を途中でやめたG4の研究を盗むことだった。理沙は翌日、一方的に辞めてしまう。沙綾香は津上翔一=アギト(賀集利樹)に助けられ、美杉家で暮らすようになる。一方、レイはアンノウンに襲われたところを葦原涼=ギルス(友井雄亮)に助けられる。2カ月後、流行を始めた携帯サイト「ESPクイズ」が呼び水となり、ふたたびアンノウンの群れは蠢動を始める。アンノウンは超能力者に感応して現れるらしい。アギトと氷川誠=G3(要潤)がアンノウンと戦っているところにG4も現れ、圧倒的な強さを見せつける。しかし、G4には弱点があった。それを装着する人間の命をやがて奪ってしまうのだ。理沙はG4のパワーを高めるため、超能力者を利用しようとしていた。そして超能力者・風谷真魚(秋山莉奈)を誘拐。アギトとG3はアンノウンの襲撃を迎え撃ちながら、真魚の救出に向かう。
G4を装着する水城史朗(唐渡亮)は超能力研究所の警備にいた際、アンノウンの殺戮を止められなかった過去がある。それが「G4の危うさも、理沙が自分をただの道具として利用していることも、承知のうえで、あえて身を挺しようとする」要因なのだが、演技も含めて今ひとつ説得力には欠ける。自衛隊が警視庁の研究を盗むという設定からしてあまり現実的ではない。監督の田崎竜太をはじめスタッフはテレビシリーズと同じだから内容も作りもテレビとあまり変わらない印象。テレビシリーズを見ている人にはあまり不満はない作りになっていると思うが、テレビを見ていない人には細かい設定が分からないのではないか。1本の映画として、こうした作りでいいのかどうかには疑問も残る。テレビと並行しての製作だっただろうから、予算と時間にも制約があったと思える。軍隊アリをモチーフにしたアンノウンのフォルミカ・ペデス、フォルミカ・レギアの動きはゾンビのようで面白かったし、アギトの物語世界の設定はなかなか凝っているので、さらに充実した映画にできる余地が大きい。十分な時間をかけて再挑戦してみてはどうか。
【データ】2001年 1時間10分 配給:東映
監督:田崎竜太 製作:福湯通夫 泊懋 早河洋 原作:石ノ森章太郎 脚本:井上敏樹 撮影:松村文雄 音楽:佐橋俊彦 主題歌:ウルフルズ「事件だッ!」 キャラクターデザイン:早瀬マサト 出渕裕 草なぎ琢仁 美術:大嶋修一
出演:賀集利樹 要潤 友井雄亮 秋山莉奈 唐渡亮 木村茜 大高力也 藤田瞳子 山崎潤 うじきつよし 中村俊介 渡辺典子 藤岡弘 升毅 RIDER CHIPS