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仮面ライダー555 パラダイス・ロスト

「仮面ライダー555 パラダイス・ロスト」パンフレット

「アギト」「龍騎」に続く3作目の劇場版仮面ライダー。昨年の「龍騎」はテレビシリーズの最終エピソードとして映画化されたが、今回はテレビとは異なる番外編である。人類の進化型であるオルフェノクが増殖し、人類は1000人余りに減っているという設定で、オルフェノクからの解放を目指す人類とオルフェノクの中心であるスマートブレイン社との戦いが描かれる。この設定が無茶である。1000人余りの人類が数十億のオルフェノクからどう解放されるというのか。オルフェノクを人間に戻す手段があるならともかく、それもなく戦うだけなら先行きは見えている。共存か脱出かしかないだろう。確かに人類との共存を目指すオルフェノクも出てくるが、その存在は大きなテーマに発展していかない。物語を善と悪の単純な図式に押し込めず、もっともっとテーマを深化させる姿勢が必要だった。そうしていれば、映画の終盤に明らかになる意外な事実も効果を増しただろう。脳天気なラストの処理を見ると、物語の収拾をつけられずに途中で放棄したのではないかと思いたくなる。劇場版の仮面ライダーは設定をストーリーとしてまとめる力が根本的に足りない。いい加減、分かる(話の作れる)脚本家を参加させてはどうか。

どこかの国で遠くない未来に起こった物語、と説明される。追い詰められた人類は対抗手段として、スマートブレイン社が持つ“帝王のベルト”の奪取を図るが、圧倒的な数のオルフェノクの前にはなすすべがない。解放軍の園田真理(芳賀優里亜)は乾巧(半田健人)が変身した555(ファイズ)を救世主と信じている。その555は1万人の仮面ライダー(ライオトルーパー)との戦いで行方不明となっていた。巧は記憶を変えられ、隆と名前を変えて生きていたのだ。真理との再会で記憶を取り戻した巧はオルフェノクでありながら、人間との共存を願う木場勇治(泉政行)と協力し、スマートブレイン社と戦う。しかし、ブレイン社の画策で木場と人間たちの間に誤解が生じ、巧は木場と戦う羽目になる。

テレビの555に関しては最初のエピソードしか見ていないので、よく知らない。登場する仮面ライダーは戦闘用特殊強化スーツとのことだ。スーツなら身につけるのが普通だが、そこは仮面ライダーだから携帯電話型の装置に555と打ち込み、ベルトに挿して、「変身!」と叫んで装着することになる。映画は今回も田崎竜太が監督を務めている。もう3度目なのではっきり書くと、田崎竜太に才能は感じられない。この人に作れるのは設定だけなのだと思う。急いで付け加えておくと、この設定だけは魅力的なのだ。問題はそこからどのようにストーリーを発展させていくか、細部をどのように描くかなのである。これがないから、仮面ライダーの映画化はテレビの延長としか見られないのである。生きるか死ぬかの瀬戸際なのに仮面舞踏会のシーンなどがあることにがっかりするし、主人公が記憶を変えられて別の人間として生きているという必然性が感じられない。第一、1万人の仮面ライダーに捕まった後、どうやって逃げたのか何も描写がない。細部が大ざっぱなのである。VFXはいい線行っているのにこれでは惜しい。と、今回も同じような感想になってしまう。どうでもいいが、クライマックスのアリーナのシーンは明らかに「クローンの攻撃」(の貧弱なコピー)だ。

同時上映の「爆竜戦隊アバレンジャー」はテレビと同じ30分ほどの長さ。これはスーパーヒーローもののパロディみたいなシリーズになっているが、前座の役割に徹している(「これから555だよ!」とのセリフがラストにある)のに好感。

【データ】2003年 1時間20分 配給:東映
監督:田崎竜太 製作:福湯通夫 泊懋 早河洋 アクション監督:宮崎剛 原作:石ノ森章太郎  脚本:井上敏樹 撮影:松村文雄 特撮監督:佛田洋 クリーチャーデザイン:篠原保 美術:大嶋修一 音楽:松尾早人 主題歌:ISSA「Justiφ's-accelmix-」
出演:半田健人 芳賀優里亜 黒川芽以 速水もこみち 溝呂木賢 村上幸平 大高洋夫 ピーター・ホー 泉政行 村上幸平 角替和枝 田口主将 津田寛治

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