It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ケイゾク/映画

「ケイゾク/映画」

元になったテレビシリーズは見たことがない。映画はまったく説明しないので、後半の描写が良く分からない。監督自身、「あえて知らない人を排除する方向に持っていく、確信犯というか。だから、ぜひビデオを見てから劇場に来てほしいですね」などと言っている(キネマ旬報2000年3月上旬号)。今はまだそれができるにしてもこれから先、数年後、数十年後のことをまったく考えていない映画製作の在り方と言わねばなるまい。刹那的で、とりあえず観客を集めればいいという考えであり、寒々とした気持ちになってくる。もっともテレビシリーズの内容について説明があったところで、この程度の脚本・演出では映画が面白くなるはずがない。いつかどこかで見たようなシチュエーションとトリックばかりを集め、映像の遊びで逃げているようでは情けない。中谷美紀と渡部篤郎という良い素材を少しも生かしきれていない。テレビのスペシャル番組で十分だったのではないか。

孤島での連続殺人を描く前半とテレビシリーズの重要な悪役・朝倉(高木将大)のエピソードを引き継ぐ後半とにはっきり別れる構成だ。15年前の沈没事故の関係者に生存者の娘から孤島への招待状が届き、7人が島に集まる−という発端はまるで麻耶雄高「夏と冬の奏鳴曲」である。警視庁捜査一課弐係の係長に就任した柴田純(中谷美紀)と真山徹(渡部篤郎)は生存者の娘章子(大河内奈々子)の依頼で島に同行する。島は疫神島と呼ばれ、昔から周辺で不思議な事故の起こる場所。事故で亡くなった霧島夫妻の娘七海(小雪)が迎えるが、その夜、七海は「両親は故意に殺された」として死のゲームのスタートを告げる。その直後、1人が毒殺される。さらに1人が転落死。犯人は七海以外には考えられないが、証拠がない。柴田と真山はそのからくりを探り始める。

ここだけをじっくり描けば、テレビのレベルではまずまずの推理ドラマにはなったかもしれない。しかし、西荻弓絵の脚本、堤幸彦監督の演出ともに底が浅い。こういうトリック主体の推理ものは海外では半世紀前に死に絶えたタイプなのである(日本ではまだ一部に生き残っている。だからテレビにはこんな勘違いの推理ドラマが溢れている)。おまけに繰り出される映像は安っぽく、出演者の演技もまさにテレビドラマの水準でしかない。前半で捜査弐係長を降格された竜雷太のエピソードなどまったく必要ないものである。コギャルの婚約者の顔を執拗に隠すので、これは何かストーリーに絡んでくるのかと思ったが、まったくなかった。その場の思いつきらしい。映画はすべてこんな調子だ。後半の(アホらしい)展開については僕にはコメントできないが、映像の水準から見る限り、いくらテレビシリーズのファンであっても、満足する人は少ないだろう。

中谷、渡部コンビの漫才的やりとりはおかしく、なるほどテレビならこんな感じでも良かったのかもしれない。「踊る大捜査線 The Movie」のような成功はかなり稀な例であることを改めて痛感させる映画である。

【データ】2000年 1時間59分 製作:TBS 角川書店 キングレコード 配給:東宝
監督:堤幸彦 脚本:西荻弓絵 音楽:身岳章 主題歌:「クロニック・ラブ(remix)」中谷美紀 撮影:唐沢悟 美術:佐々木尚 プロデューサー:植田博樹 田上節朗 浜名一哉
出演:中谷美紀 渡部篤郎 鈴木紗理奈 小雪 泉ピン子 徳井優 高木将大 田口トモロウ 片桐はいり 酒井敏也 伊丹幸雄 矢島健一 有福正志 村井克行 天本英世 大河内奈々子 生瀬勝久 泉谷しげる 竜雷太

TOP