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ガメラ3 邪神<イリス>覚醒

「ガメラ3 邪神覚醒」

ものが違う。レベルが違う。「ガメラ3 邪神覚醒」を見た印象はそんな感じである。冒頭、フィリピンの山村にギャオスの調査に出かけた長峰(中山忍)のシーンから映像に力が満ちている。深海探査艇があの無数のガメラの骸を見つけるシーンにも、心が震えた。「これは傑作だぞ」そんな思いが駆けめぐった。その期待は途中で少し裏切られるのだけれど、脚本、演出、SFXのどれをとっても「ガメラ3」は日本映画のレベルをはるかに超えている。

渋谷壊滅のシーンがとにかくもの凄い。「ガメラ3」はこのシーンだけで後世に残る。ギャオスを追って飛来したガメラはプラズマ火球でビルを破壊し、逃げまどう通行人を踏みつぶす。さらにギャオスの燃える体が落下して多くの通行人が犠牲になる。金子修介と樋口慎嗣は圧倒的な迫力と重厚感でこの場面を描ききった。「プライベート・ライアン」のノルマンジー上陸の場面に匹敵するインパクトがある。

この災害で12,000人が犠牲になる。「ガメラ2 レギオン襲来」で明らかになったようにガメラは地球生態系の守護神。決して人間の味方などというアホな怪獣ではない。生態系を破壊するギャオスを倒すためなら、人間の犠牲など取るに足りないし、人間が生態系を破壊するなら人間の敵にだってなるのである。映画はこのガメラとは何なのかという謎とガメラ災害によって両親を殺された殺された少女綾奈(前田愛)の物語を軸に緊迫と緊張の展開をしていく。

誰もが指摘するように、山崎千里と手塚とおるの役はよく分からない。これは単純に描写不足のためで、ここをじっくり描けば、映画は2時間を越えていただろう。2人とも、伊藤和典脚本の映画にはよく出てくるタイプのキャラクターなので、瑕瑾と割り切りたい。飛翔するイリスの姿は、合評会では「鳳凰」という意見があったが、僕は「エヴァンゲリオン」だと思う。樋口慎嗣はエヴァの絵コンテもかいている。ともあれ、“怪獣映画を超えた怪獣映画”という紋切り型の表現がこれほど似合う映画はなく、方法論でこれを上回ることは難しいだろう。「ガメラ3」は新次元に踏み込んだ怪獣映画なのである。

【データ】1999年 1時間43分 製作:大映 徳間書店 日本テレビ放送網 博報堂 日本出版販売 配給:東宝
監督:金子修介 脚本:伊藤和典 金子修介 特技監督:樋口真嗣 撮影:戸沢潤一 音楽:大谷幸
出演:前田愛 中山忍 藤谷文子 福沢博文 螢雪次朗 山崎千里 手塚とおる 本田博太郎 川津祐介 田口トモロウ 根岸季衣 小松みゆき 安藤希 小山優 津川雅彦 渡辺裕之 かとうかずこ 石橋保 三輪明日美 仲間由紀恵 伊集院光 大橋明 清川虹子

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