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シネマ1987online

K-20 怪人二十面相・伝

「K-20 怪人二十面相・伝」パンフレット

クライマックス、ビルから落ちる金城武を間一髪、松たか子がジャイロコプターで救いに来る場面を見て確信した。これは「ルパン三世 カリオストロの城」だ。パンフレットのインタビューで監督の佐藤嗣麻子はまったく触れていないけれども、この空中アクションの多さと令嬢の松たか子の在り方、事件が終わった後に思わず2人が抱き合いそうになる場面などなど「カリオストロの城」との類似点が多い。

もちろん、一見すれば、主人公が持つ武器から「バットマン」や「スパイダーマン」を思い起こすのは当然だし、怪人二十面相のダークな扮装は「バットマン」そのものなのだけれど、本筋は「カリオストロの城」である。時代錯誤的な企画としか思えなかったこの題材をエンタテインメントに仕上げた佐藤嗣麻子の手腕は褒められて良い。しかし、それより何より金城武のアクションと山崎貴が加わったVFXを褒めるべきだろう。金城武は演出の緩みが気になったところで軽やかにアクションを見せ、画面を引き締める。こういう優れた俳優を中国や香港映画にばかり出していて良いわけがない。最近の日本のアクション映画の中で出色の快作。シリーズ化を望みたい。

第二次世界大戦が回避された1949年の日本が舞台。そこでは一部の金持ちである華族と貧困層に二分され、両者の間では結婚もできないという厳然とした差別があった。という説明で始まり、上空からVFXで描いた帝都を移すカメラワークが良い。帝都では華族を専門に狙う泥棒の怪人二十面相が暗躍していた。主人公のサーカス団員遠藤平吉(金城武)はカストリ雑誌の記者(鹿賀丈史)から明智小五郎(仲村トオル)と華族羽柴家の令嬢羽柴葉子(松たか子)との結婚式を撮影するよう頼まれる。厳重な警備をかいくぐって天窓から写真を撮ろうとしたその時、ビルの中で爆発が起こり、平吉は怪人二十面相と間違えられて逮捕されてしまう。護送の途中、天才カラクリ師の源治(國村隼)らの手助けで脱走した平吉は無実の罪を晴らすため怪人二十面相を追うことになる。

金城武がビルから飛び降りたり、鉄塔に上ったりするアクションは明らかにワイヤーで吊られているが、それでもアクションに慣れていないとできない動きだろう。この映画、ベタなギャグもあるけれど、ユーモアを散りばめた展開とアクションのバランスが良い。アクション監督は海外の作品にも参加している小池達朗と横山誠。この名前は記憶しておきたい。

帝都には東京タワーのようなタワーがあるが、時代を考えれば、まだできていないはず。昭和33年を舞台にした「ALWAYS 三丁目の夕日」で建設途中の東京タワーを見せた山崎貴の遊び心なのだろう(VFXディレクターは渋谷紀世子で、山崎貴は協力とクレジットされている)。空撮で貧困層の街並みとその奥にある近代的な建物を対比させるのがうまいところで、この帝都もまた現代以上の格差社会なのだ。佐藤嗣麻子はそうした世相を反映させつつ、映画の架空世界を構築している。僕は佐藤嗣麻子作品は吉野公佳主演の「エコエコアザラク」(1995年)しか見ていないが、あれもまたVFXに見るべき所のあった作品だった。

松たか子はコケティッシュでキュートな役をうまく演じている。國村隼の妻役・高島礼子もユーモラスな部分を見せて良かった。「カリオストロの城」と似ているなと思って見ていると、浪越警部(益岡徹)は銭形警部に見えてくる。

【データ】2008年 2時間17分 配給:東宝
監督:佐藤嗣麻子 エグゼクティブ・プロデューサー:阿部秀司 奥田誠司 原作:北村想 脚本:佐藤嗣麻子 撮影:柴崎幸三 美術:上條安里 音楽:佐藤直紀 VFXディレクター:渋谷紀世子 アクション監督:横山誠 小池達朗 脚本・VFX協力:山崎貴
出演:金城武 松たか子 仲村トオル 國村隼 高島礼子 本郷奏多 益岡徹 今井悠貴 要潤 木野花 串田和美 小日向文世 大滝秀治 松重豊

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