BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ
劇場版「BLEACH」第3作。僕は「BLEACH」に関しては門外漢で、原作もテレビアニメも見ていない。一昨年の劇場版第2作で初めて見た程度の知識しかない。劇場版は独立したストーリーだが、それでも物語の背景を知らないと、分かりにくい部分がある。Wikipediaから引用しておくと、「ひょんな出来事から悪霊・虚(ホロウ)の退治者(死神)になってしまった高校生、黒崎一護(くろさき いちご)とその仲間達の活躍を描いた漫画」ということになる。
今回は一護に死神の力を与えた朽木ルキアが何者かに記憶を消されるところから始まる。一護は異変に気づき、尸魂界(ソウル・ソサエティ)に行くと、死神たちは皆、一護の記憶をなくしていた。一護は旅禍(りょか)として追われ、ルキアを助けるために奔走する。というのが大まかなプロット。94分の映画としてはこれぐらいだろうが、物語の全体は悪くないにしても、尸魂界の死神たちが記憶をなくす理由に説得力が乏しい。説明されても納得できない。ここをもう少し工夫すれば、映画はもっと面白くなったのではないか。高橋ナツコの脚本は前半の語りに配慮が足りないと思う。パンフレットのインタビューを読むと、「記憶をどう消していくかというところは時間がかかりました」と言っているが、とても時間をかけたとは思えない。プロットに終わっていて密度は薄い脚本だ。
それでも一昨年の「劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸」よりはよくまとまっていると思う。ただし、アニメの技術で際だったものはない。テレビアニメや原作を読んでいるファンはどう感じるのだろう。一緒に行った長男は「残念だったね」、次女は「面白かった」という感想だった。どちらも原作、テレビアニメとも見ている。
原作を読んでいない人間には相変わらず、耳で聞いただけでは理解できない言葉も頻出する。「霊子(れいし)」や「瀞霊廷(せいれいてい)」なんて、まず字面を想像できない。これはファン向けに作られているのだから、仕方がないか。公開から3週間たっても満席に近い入りなのだから、ファンには支持されているのだろう。