8Mile
心を突き刺すエミネムの歌
その昔、エルビス・プレスリーは、黒人歌手のような歌い方だと騒がれたが、この映画の主役を演じる歌手エミネムの人気はエルビスがデビューした時の衝撃に少し似ている。エミネムの自伝ともいえるこの映画は、若者のサクセス・ストーリーだ。米国の底辺にいる人々の行き場のないエネルギーが激しいリズム、聞くに堪えない汚い言葉の応酬となってさく裂する。
タイトルの8マイルとは映画の舞台デトロイトの白人と黒人の居住区を分けている道路のこと。貧しい白人のエミネムは黒人の中でラップを競い合う。母親は男にすがっていくしか生きる道を知らない。そんな母親や幼い妹を気遣いながら、彼は底辺から這い上がろうと心の葛藤を即興で歌詞にしてたたき付けるように歌い、バトルを勝ち進む。
エミネムの歌う主題歌「ルーズ・ユアセルフ」はアカデミー賞オリジナル歌曲賞を受賞。心に突き刺さる。(2003年6月26日・林田)