めぐりあう時間たち
時代交錯させ女の苦悩描く
このような作り方をした映画に私は今まで出合ったことがない。まずストーリーの展開の面白さに驚かされる。時代を行きつ戻りつしながら、三人の女性の生き方が実に見事に描かれている。
英国の女流作家バージニア・ウルフの小説「ダロウェイ夫人」を軸に、画面は予告もなしに突然時代を超えてぱっと変わるが、それでも観客は全く戸惑わない。脚本がすごいと思う。それにも増してスティーブン・ダルドリー監督の演出のうまさにぼうぜんとする。
作家としての苦悩をニコール・キッドマンが熱演している。しかし彼女以上に1950年代の豊かなアメリカの主婦の苦悩を演じたジュリアン・ムーアは強烈だった。子どもを捨てて去って行く母親を理解できない観客も多いことだろう。彼女に共感し、おえつし、自分の生き方を振り返ってみる女性もきっと多いと思う。とにかく見てほしい!(2003年7月3日・林田)