仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
子供向けでも映画的な衝動
今の30-40代前半の方々は「仮面ライダー」の洗礼を受けているだろう。「変身!」と言って、高所から飛べば、気持ちだけはヒーローに変わっていたのだ。その魅力を再生させているのが、新世代ライダーシリーズで、その最新作がこの『仮面ライダー555(ファイズ)』だ。
子供向けの映画と高をくくって見始めると、そのうち事態は変わってきて、作品の中に数々の映画的な衝動があることに驚くことになる。
例えば、バイクを馬と見立てれば、一種の閉じ込められ型の西部劇に見えてくるはずだし、主人公をヒロインが散髪するシーンにも同様の構造がみなぎっている。
この散髪のシーンは全編の中で最も美しいシーンで、思わずジョン・フォードの名前をつぶやきたくなる。もちろん、子供を対象にした映画ゆえに作りは甘い。しかしながら、この剛速球・ど真ん中ぶりを誰がばかにできるだろう。(2003年9月4日・臼井)