HERO
アクションに東洋的美意識
秦の時代、秦王を狙う三人の刺客をすべて討ち取ったとして一人の男(無名)が謁見を許される。彼の口から三人の刺客を討った物語が語られる。驚くべき物語とは。
「初恋のきた道」「あの子を探して」のチャン・イーモウ監督の新作である。一流の俳優を集め(ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーなど)、ワイヤアクションやコンピューターグラフィックスを駆使し、膨大な製作費(三十億円)を費やしている。この作品で最も印象に残るのは鮮やかな色彩感覚とこまやかな演出である。特にアクションシーンの美しさは映画史に残るのではないだろうか。作品はまた「赤」(激情と嫉妬)「白」(真 実)「あい色」(ロマン)「緑」(回想)「黒」(神秘)の色に意味を持たせている。
ハリウッドの大作は大味な作品が多いが、この中国映画は細部まで監督の東洋的な美意識が行き届き、丁寧に作られている。この夏一番の推薦作である。(2003年9月11日・酒井)