エデンより彼方に
まだまぶしい50年代の米国
美しい色、美しい画面の映画だ。画面いっぱいの秋の紅葉はため息が出るほどで、女性たちの服装も華やかで美しい。
1950年代、まだまだ米国が日本人にはまぶしく幸せな国に見えていたころのメロドラマである。絵に描いたように幸せな上流家庭に暮らし、優しくて非の打ちどころのない主婦が世間のいじわるな目によって不幸に落とされていく。
映画はうわべだけを繕う家庭や、黒人と話をしただけで奇異な目で見られる人種差別を浮き彫りにする。果たして今の米国で、この映画で描かれたことはもう過去の出来事だと言い切れるだろうか?
紅葉の季節が冬を経て春を迎えるように主人公は苦悩を乗り越える。彼女はきっとかわいいだけの女からシャープないい女に変身していくのだろう。
監督はトッド・ヘインズ。主演のジュリアン・ムーアはアカデミー主演女優賞にノミネートされた。(2003年10月30日・林田)