死ぬまでにしたい10のこと
残された時間を懸命に生きる
並んで座ったロビーで医師がアンに言う。「余命は2カ月…」。2人の幼い娘、優しい夫とトレーラーハウスで暮らすアンは23歳だ。つましいながらもあふれるような幸せに包まれていた。
そこへ突然の死の宣告である。その衝撃、絶望は計り知れない。彼女はその運命の重圧を丸ごと自分の胸に封じ込め、くじけそうになりながらも、死への準備を始める。その時から日常のささいな事が、とてもいとしく大事に思えてくる。人は、死というものを意識した時、初めて“生きる"ことを知り、実感するということがアンの聡明で温かなまなざしを通して伝わってくる。
サラ・ポーリーが繊細でガラスのような美しさの中に、残された時間を精いっぱい生きる芯の強いアンを力まず、サラリと演じている。監督はイザベル・コヘット。「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル監督が制作にあたっている。(2003年11月6日・杉尾久)