夢 追いかけて
映画的技法に逃げない潔さ
映画には新聞が出てくる場面が時々ある。例えば怪獣映画。ゴジラの被害の大きさを新聞が簡潔に伝える。スポーツ映画では主人公の勝ちっぷりを小気味よく紹介する。映画の省略のテクニックの一つなのだが、輪転機が回る場面でもあれば、そのニュースは興奮を倍加させるだろう。
「夢 追いかけて」はスポーツ映画の変型といえるだろう。ここでも主人公が2度のパラリンピックで合計8年間、どのような活躍をしたのかをほんの四秒で見せてくれて、ラオール・ウォルシュか、B級映画のようだと手をたたきたくなる。もちろん、これは最大級の賛辞である。
スポーツ映画の最低の慎みとして、泳いでいる身体はスクリーンの上に刻み込まれており、カットを割るなど映画的技法に逃げ込まない点は実に潔い。監督の花堂純次が宮崎出身であるとか、障害者を扱った映画だ、とかいう文脈を忘れても十二分に面白いのだ。(2003年11月27日・臼井)