棒たおし!
青春の命題に情熱で答える
すべての撮影が、宮崎で行われた話題の青春映画である。主人公の高校生次雄(谷内伸吉)と友人勇(金子恭平)との友情と、幼なじみの小百合(平愛梨)とのほのかな恋心を描いているのだが、凡百の青春映画と一線を画している点は、その青春の命題にある。
「どうして人は死ぬって分かっているのに生きるか、分かる?」との小百合の問いに主人公は答えられない。彼女は「希望があるから」と言う。かつて「男はつらいよ」で甥(おい)っ子に、同じ質問をされた寅次郎は「一日が終わって、今日がいい日だったと思えば、それでいいんじゃない」と答えた。
答えの出ない永遠の命題に、この映画は「棒たおし」という体育祭の競技へ懸ける情熱で答える。主人公たちの熱い気持ちと、口笛で吹く松田聖子の歌が妙にほろ苦く、中年おやじは涙が出た。
見終わって知人がポツリ。「年を感じるよね」。その人はまだ20代なんだけど…。(2003年4月24日・笹原)