It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

勝手にしやがれ

鮮烈な叙情と速すぎる展開

6月開催の宮崎映画祭でジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」(1959年・フランス)が上映される。この世に愚かな男の映画というジャンルがあるなら、この映画はその筆頭だろう。

主人公(ジャン=ポール・ベルモンド)は車を盗み、人を殺し、女にほれて、裏切られて結局死ぬ。こんな愚かな男の話が映画になるのかと余計な心配のひとつでもしたくなるほどだ。

しかし、映画は「勝手にしやがれ」により革新された。お話によってではなく、その語り口によって。映画の話を追う観客は、置いてけぼりを食らうだろう。それほどまでにこの映画は速い。ラスト、主人公は「最低だ」と一言つぶやき死ぬ。速い、速過ぎる。

鮮烈な叙情とはまさにこのことだ。夕日を背景に男女のアップ。そこにショパンが…。くだらない叙情はもうウンザリだという真の映画ファンのためにこの映画は存在する。(2003年5月29日・臼井)

TOP