イノセンス
押井守監督の意図的な迷宮
「難解だ」という感想があふれているので、この作品を楽しむために最低限の手引を書いておきたい。
(1)舞台は近未来。ここでは人間とロボットが共存している。ロボットはさまざまに一般化しており、それを「飼う」という概念さえある。
(2)物語は飼われていたロボットが飼い主を殺害するという事件の解明である。
(3)登場人物たちは全員が引用癖を持ち、やたらと哲学的なことを言うが、無視すべし。これに付き合っていると全体が見えなくなる。
(4)主人公バトーには幽霊となって世界を暗躍している「少佐」(前作「攻殻機動隊」のヒロイン)という思い人がいる。
以上の点を踏まえれば、分かりにくいこともないだろう。もし、ほかにも分からない点があるなら、それは押井守監督が意図的に迷宮に誘っているのである。その迷宮の向こうには、ある個人の生への切なる思いがある。(2004年3月18日・臼井)