花とアリス
映像と音楽の魔術師は健在
「リリイ・シュシュのすべて」(2001年)で中学生のいじめを独自の視点で衝撃的に描いた岩井俊二監督の新作。映像と音楽の魔術師ぶりは健在で、前作とは打って変わって軽快なラブストーリーとなっている。
高校生のハナ(鈴木杏)とアリス(蒼井優)の友情と恋愛を等身大で描いており、2人にもてあそばれる宮本君(郭智博)との微妙な三角関係がとても心地よい。
映画はその宮本君の「記憶喪失」をキーワードに、クライマックスの学園祭とオーディションに収束していく。前半で描かれる細部(ところてんやトランプやデジカメなど)がすべて後半に伏線として生きてくる。特にアリスの父親(平泉成)のセリフ〔万年筆を贈る訳〕など、脚本のうまさが光るところだ。
映像的にはアリスがクラシックバレエを踊るシ―ンが出色だった。他の場面も岩井監督の映像美がたっぷりの2時間15分である。(2004年3月25日・笹原)