It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ロスト・イン・トランスレーション

疎外感共有する男女のロマンス

シャーロット(スカーレット・ヨハンソン)はカメラマンの夫とともに東京に滞在している。大学を出たばかりで、やることはない。ある日、CM撮影に来ている俳優ボブ(ビル・マーレー)と出会う。彼の悩みは日本人相手のうんざりするような仕事と妻から深夜に届くファクス。2人の共通の話題は「眠れない」こと。

東京の街と人が彼らには異質で、その疎外感が彼らを結び合わせたとか、いや彼らのもともとの生活の疎外感が大きく作用したとか、描写には繊細さが漂う。洗練された会話(監督・脚本のソフィア・コッポラはアカデミー脚本賞を受賞)にはユーモアの中に切実な本心が見え隠れしている。

言葉にならない気持ちのようなものが、せりふや街の景色や二人の名優の表情から伝わってきて、それがどこかに引っかかり、いつの間にか膨れ上がる。豊かな情緒あふれる作品だ。(2004年7月8日・野口)

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